1000万部突破記念!『センゴク』第1話 著者コメンタリー挿入版!!

祝・1000万部突破! 今や戦国時代漫画の定番となった『センゴク』シリーズですが、15年に及ぶ長期連載はいかにして始まったのか? ヤンマガでの連載立ち上げ当初のことを、宮下英樹氏と当時の担当編集者T氏に聞きました。“企画段階の紆余曲折”“意外な元ネタ”“秀吉のキャラ誕生秘話”などなど、現担当編集も初めて知るエピソードの連続! センゴクファン、歴史ファン、そして漫画家志望者も必見です。

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1000万部突破記念!『センゴク』第1話 著者コメンタリー挿入版!!
祝・1000万部突破! 今や戦国時代漫画の定番となった『センゴク』シリーズですが、15年に及ぶ長期連載はいかにして始まったのか? ヤンマガでの連載立ち上げ当初のことを、宮下英樹氏と当時の担当編集者T氏に聞きました。“企画段階の紆余曲折”“意外な元ネタ”“秀吉のキャラ誕生秘話”などなど、現担当編集も初めて知るエピソードの連続! センゴクファン、歴史ファン、そして漫画家志望者も必見です。

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編集T:懐かしいですね。ここ、ちゃんと城描いてる。
宮下:この頃はまだ知識がないから、下手したら天守閣描いちゃってたかも…。
編集T:冒頭はいろいろ悩んだ記憶があるなあ。
宮下:とっかかりがないから、「桶狭間から何年」とか「関ヶ原の何年前」とか大きな時代の区切りから入ろうと思ったんですよね。

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編集T:「超リアル」は企画の前段階からキーワードだった。その頃ずーっとリアルリアル言ってたんだよね。当時ヒットしていた『ブラックジャックによろしく』の手法を意識してたんだ。取材をして裏側を描く、みたいな。
宮下:僕はどっちかというと『風光る』とかを参考にしてましたね。当時は新説とかあんまり興味なかったんです。

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宮下:あー、この場面は『鬼武者』とかのイメージで、すごい広い迷路みたいな天守閣を描いてますね。二階とかあったり階段とかあったり。
編集T:畳もあったりね。

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宮下:あれ?あれ?このへんって解説なかったっけ? もっと冒頭からいっぱい解説が入ってると思ってた。
編集T:『攻殻機動隊』、好きでしたよね。

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宮下:退廃的な感じを出すのに、怪しげなお香が焚かれてるとか、いろいろ細かい工夫してますね。

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宮下:お蝶の登場なんだけど、帯が江戸時代のぶっといやつ…ひどいですね。
T:なるほど、江戸時代と交ざってるんだ。

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宮下:最後のコマでダンゴ鼻が出てきますけど、ネームを何回か描いてるうちに、こういうデフォルメ顔ができてくるんですよ。これができたら、キャラとして固まってきたってことなんですよね。

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編集T:最初はお蝶を出すかどうかは決めてなかったんだけど、宮下さんが「いやもう絶対に必要だ」って言って出ることになったんですよ。

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宮下:第一話は最初から最後まで逃げる展開ですけど、「逃げることって面白いんだ」ってことに後から気づいたんですよ。メル・ギブソン監督の『アポカリプト』って要は逃げるだけの映画だったんですけど、その映画の批評かなにかを読んで、逃げることがエンタメなんだって僕の中で自覚した。

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編集T:「イチバン怖いのは弓」、結局ここが一番評判がよかったんだよね。
宮下:そうですね。
編集T:みんな敵を刀で斬ってると思ってたからね。

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編集T:戦争モノにするっていうコンセプトを狙ってるから、一話では一人は死なないとな…みたいなことがあって。で、川爺がすぐ死んじゃうことに。

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編集T:ゴンとお蝶は「プラトニック」ってメモに書いてあるんですよね。
宮下:秀吉を女好きのエロキャラにすることとの対比を考えてたんだと思います。

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宮下:ゴンベエ、最初は実在の人物だと思われてなかったですよね。
編集T:「戦国時代の名無しの権兵衛ってことでしょ?」とかよく言われました。

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宮下:最初のネームでは、ゴンが山賊団のヤンキーリーダーみたいのをやってて、そこから桶狭間を見て信長に憧れる、っていう展開だったんだよね。それが何回やっても上手くいかなくて…。で、あるとき編集から電話がきて「落城からでどうですか」って。で、一気にこれは描きやすいなってなった。

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「死んでも生き抜いてやる」 編集T:死んでも生き抜く、ってセリフにゴンの泥臭いとこが出てますよね。これをやったからキャラの性格も掴めたんじゃないかな。

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宮下:ここ間違ってますね。ゴンは伊予にいたことはないけど「萩原伊予守家」にいたからそうしちゃってるんですね。
編集T:武将の官職名とか通名とかも結構こだわってましたよね、初期はね。たまに間違えちゃってネットで言われんだ…。
宮下:毎回調べなきゃいけないから、いまだに新担当を苦しめつづけてる(笑)

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宮下:普通、馬は鐙がないと乗りこなせないというのは、知識としては当時もあったんですよ。この場面には、落城の時に鐙をつけないくらい焦っていたという裏設定があった。

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宮下:このへんはとにかく面白いと思うことを詰め込んでいたという感じですね。歴史ものをいっぱい読んでいたわけではないから、歴史を面白く描くのに何が必要か分からないまま進めてしまっていた。

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編集T:読者がこの漫画を読む時間って5分もないじゃないですか。だから翌週には内容を忘れてると思うようにしてる。それでも覚えてもらえる作りを目指したんだよね。
宮下:今でもそういう意識はありますね。

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宮下:知識不足でやりようがなかったから、「主人公を走らせる」ってセオリーに従ってみたのがこれ。主人公のやることを逃げることに絞ったら一気に描きやすくなったっていうか。変にひねらない方がいいんだよね。

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宮下:ここまで逃げているだけなんだけど主人公はずっと映ってますね。
編集T:カメラがずっとゴンを追ってるからゴンの気持ちに乗ったまま読め進められる。これ以上読みやすい作りはないと思いますよ。

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編集T:最初、アンケートの順位は高くなかったんですよね。でも単行本は発売してすぐに重版になった。
宮下:1、2巻の装丁の出来が良くて、自分でも気に入ってました。
編集T:でも、まさか1000万部突破するとはね。それにこんなに続くなんてあの時は思わなかったです。宮下さん、おめでとうございます!

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宮下英樹が初代担当と振り返る
『センゴク』誕生秘話!!