僕の名は、“HOKKORI陰キャ”たかはし。しがないライターだ。
コミックDAYS編集部に誕生した「ゴシップ班」なる謎の組織に所属している。
どうやら漫画界のヤバいネタを果敢に調査して報告する、社会正義団体だとか。
ちょっと理解が及ばないのだが小銭を稼ぐために頑張ります。ハァ……。
さて、僕が365日のうちで最も忌み嫌う日は10月31日。
そう、ハロウィンである。
陰キャを地でいく僕にとって、リア充どもが街を闊歩するこのイベントは、まさにこの世の地獄。いかに陽気な装束でデコレートしても悪魔にしか見えてこない。
「こんな日はさっさと家に帰ってハロウィンナンパものAVでも観よう……」
そう思っていた矢先、くだんの「ゴシップ班」鬼デスクから連絡が入る。
「ハロウィンではしゃぐパリピがどんな漫画を読んでるのか気になるよね？ 今後のコミックDAYSのためにもリサーチしたいよね！」
ハロウィンだからなのか、悪魔が降臨した。お菓子あげたら帰ってくれるかな。
だが僕も大人なので、金銭の発生する依頼とあらば断わることはできない。
この日ばかりは異質とも言えるごく普通の服装（マ〇エツで買った朱色のセーター）で、午後10時、深夜の渋谷へと足を踏み入れた。
なるほど、ここが地獄か。
そこかしこに仮装した男女がたむろし、目をギラギラさせたヤ○チンどもはハロウィンに便乗してナンパに精を出しているようだ。
こんな場所に長く滞在していたら命にかかわる……。一秒でも早くネタになるインタビューして帰るぞ僕は！
まずは声をかけやすい、優しそうな人を探そう。
いた！ 第一仮装人発見！
※お写真の掲載許可はいただいております(以下同)。
のび太（20代・男性）としずかちゃん（20代・女性）である。
聞いたところ、ただのお友達同士だそうだ。
小学生なのにお酒を手にしていることには目をつむり、
「おう、のび太！ 最近読んで面白かった漫画聞かせろよ！」とヘコヘコしながらインタビューを敢行する。
のび太 ⇒『ポプテピピック』大川ぶくぶ／『リアル』井上雄彦
「講談社から来ました」と名乗った当方に対して、変に気を使った回答をしてくれなくて良かった。タイトル通り、『スラムダンク』よりも現実的に描かれている『リアル』にハマったらしい。
しずかちゃん ⇒ 久保ミツロウ先生の作品（全般）
こちらも気を使ったわけではないと思うが「キャラクターが可愛らしい」という、なんとも女子っぽい回答であった。
そんなドラえもん劇団に話を聞いていると、
「一緒に写真とろーよ！」と突然２人の乱入者が。
パリピってすごい。
カネキ（30代・男性）と馬（20代・男性）である。
この闖入者２人組、親しげに会話してるので知り合いかと思ったら、まさかの初対面だとかパリピってすごい。
ついでだからアンタらも最近読んで面白かった漫画教えていけや！
カネキ ⇒『3.3.7ビョーシ!!』『アゲイン!!』久保ミツロウ
まさかの久保ミツロウかぶり。久保先生しゅごい。
というか『東京喰種』じゃないんかい！
まさか気を使ってくれたのかな……。
馬 ⇒『ジョジョの奇妙な冒険』荒木飛呂彦
『風のシルフィード』（古い）じゃないんかい！ って若い人は知らないか……。
「能力バトルとポージングが面白い」……めっちゃ真面目に答えてくれた。
みんな快く答えてくれる……。パリピにも良い人はいるんだ。
しばらく渋谷をブラつくというのび太＆しずか、疲れたから帰るというカネキ＆馬に別れを告げ、新たに優しそうな獲物を物色する。
うわぁぁぁぁぁぁぁ！ ファミチキだ！ どういうことなんだ！ 何でもアリかハロウィン！ というか凄いな、これ。当然、自作のようだが、なぜファミチキになろうと思ったのか……。
闇が深そうなのであまりツッコまずインタビューに移行する。
ファミチキ ⇒『東京喰種 トーキョーグール』石田スイ
ここで来たよ『東京喰種』！ さっき聞きたかったヤツ！
人と喰種の戦いや、キャラそれぞれの葛藤に面白さを感じているらしい。
視界の悪い中、真摯に対応してくれてありがとう。
ファミマへと向かうファミチキを見送り、次のターゲットへ。
完成度の高いブチャラティ（20代・男性）をゲッツ。
こんなガチガチの仮装をしているが、実家は厳しい家柄のようで、幼い頃は漫画を読ませてもらえなかったそうだ……。
聞くまでもなくあのタイトルが出てくるとは思うが、早速インタビューしてみよう。
ブチャラティ ⇒『奇子』手塚治虫
まさかの変化球！ 『ジョジョ』じゃないんかい！
「（読んだ）当時では考えつかないほどドロついたコンセプトが印象に残った」との
こと。
確かにものすごい内容の作品だが、渋谷でその名を聞くことになるとは……。
幼い頃に読めなかった分、これからもたくさんの漫画を読んでほしい。
そんな思いを胸に秘めつつ、クラブへと向かうブチャラティを見送った。
アリーヴェデルチ！
出ました！
今年実写映画が大ヒットしたあの作品から、坂田銀時（20代・男性）と神威（20代・男性）。
なかなか力の入った仮装じゃないか…貴様らの漫画好き度を見せてみろ！
坂田銀時 ⇒『ONE PIECE』尾田栄一郎
『ONE PIECE』くらいしか読まないとのこと……。
見損なったヨ銀ちゃん！…あんたの漫画への想いはそんなもんなのかヨ！
というかこの作品、もっと早く出ると思ってたのに意外と出なかったな。
神威 ⇒『七つの大罪』『ライジングインパクト』鈴木央
講談社タイトルがやっと登場しました！ ありがとう！
でも鈴木先生を好きになったのは『ライジングインパクト』からで、毎週買ってる雑誌もジャンプだとか。
とはいえ「色々な謎がまだまだ明かされていない」という点に面白さを感じているあたり『七つの大罪』もしっかり読み込んでくれているようだ。
「二人とも『銀魂』じゃねーのかよ！」という言葉がノドまで出かかったがグッと飲み込み、『銀魂』を読んだことすらない（映画は観たらしい）という銀ちゃんたちと別れた。
いやーしかし男ばっかりだな……。
だが女の子の方が声をかけるのに勇気がいる……通報されたりしたら嫌だし。
「女の子にも声かけてくださいよ～」
遅れて合流してきた鬼デスクが何か言っている。「ほら、僕は身内にしか威張れないじゃん」と清々しいまでのクズっぷりだ。
てゆうか声かけてるんだけどな、最初に（のび太ありきだが）。
意を決し、逮捕覚悟で女子に声をかけていく！ どけ！ ナンパ野郎ども！
おわっビックリした！ チャイナゾンビ（20代・女性）が現れた！
ずっとコスプレ的な仮装してる人にばっかり声かけてたけど、本来ハロウィンにする仮装ってこういうことだよね？
というわけで早速、最近読んで面白かった漫画を聞いてみよう！
チャイナゾンビ ⇒『干支天使チアラット』中川ホメオパシー
恥ずかしながら僕の存じ上げないタイトルでした。
面白いと思った理由を「かわいい、おもしろい」とシンプルに答えてくれたが、帰宅後に読んでみれば本当にその通り。可愛い絵柄でかなりエグいギャグをやっている。
気になった人は自分でググってみてくれよな！ リンク貼ったりしないぞ☆
よーし！ この調子で女子にもどんどん話を聞いていこう！
どこかに漫画が好きで、陰キャな僕の話も心優しく聞いてくれて、おまけにちょっとエッチなお姉さんでもいないものか……って、そんな都合よくいるわけが……
いたー！ なんだこれは？ どこを見ればよいのだ！
どこを見てもエロいぞ！
コンセプトは“野良猫”らしいが、こんなスケベな野良猫がいてたまるか。
これで漫画が好きって……ぜひお友達になってほしい……とは口が裂けても言い出せないチキンな僕は、目のやり場に困っているフリをしつつも随所でチラ見しながらインタビューを開始する。
野良猫さま２匹 → 『賭ケグルイ』原作：河本ほむら／作画：尚村透
２人そろって同じ作品が好きとは……仲良しさんだなぁ。
向かって右の娘は職業がディーラー、左の娘は趣味がギャンブルということで「賭けている人たちの心理描写」などが面白いと思ったらしい。
筆者も大の競馬好きなので、ぜひお友達になりたい。
とは言い出せなかったので、名残惜しいが写真撮影をしてお別れしようとしたそのとき、僕のスマホに過剰な反応を示す二人。僕はあるアプリのスマホケースを使っているのだが、どうやら二人もそのアプリを遊んでいるらしい！ 本当ならここで、マルチプレイに誘うためLINEのIDでも聞いておきたいところだが、筆者はビビりなうえに仕事中である。どうしてパリピに生まれなかったのか……このときばかりは彼らがうらやましかった。
この後も渋谷の街を徘徊し続け、最終的に約30名へのインタビューに成功。
僕の靴とズボンの裾がビールだかチューハイだかでびちゃびちゃになったこと以外は、特にハプニングらしいハプニングも起こらなかった。
途中、ナンパの邪魔をされたとお怒りのお兄ちゃんに若干絡まれたりもしたが……。
さて、集計結果は以下の通り。
【４票】
ONE PIECE
【３票】
東京喰種
【２票】
銀魂
NARUTO
賭ケグルイ
【１票】
3.3.7ビョーシ!!
アゲイン!!
七つの大罪
進撃の巨人
RAVE
センゴク
ポプテピピック
リアル
ジョジョの奇妙な冒険
アド・アストラ
ライジングインパクト
ドラゴンボール
ゆらぎ荘の幽奈さん
思い、思われ、ふり、ふられ
奇子
名探偵コナン
銀と金
ReLIFE
ソードアート・オンライン
干支天使チアラット
久保ミツロウ先生の作品
【参考記録】
東のエデン（アニメ）
ミニオンズ（アニメ）
漫画読まない
堂々一位に輝いたのは『ONE PIECE』！ だが、渋谷の若者だけにメジャー志向で『ONE PIECE』一強だと思っていたので正直驚いている。パリピはパーティーばかりで漫画を読まないと思い込んでいたが、みんないろいろ読んでいるんだな……。
非常に興味深い。ご協力いただいたみなさん、ありがとうございました！
※お写真の掲載許可はいただいております。
集計結果を見て分かるのは集英社の作品の多さ。
おそらく「コスプレし甲斐のある」タイトルが集英社には多いのだろう。
講談社も『進撃の巨人』や『セーラームーン』などは見られたが、あくまでも少数派。
「この夜の」「渋谷での」という条件のもとでは集英社の圧勝か。とはいえ、
今後はコミックDAYSからコスプレ受け（インスタ映え）するタイトルがたくさん出てくる（はず）！
時刻は午前3時……渋谷駅周辺も人がまばらになってきた。「この企画のおかげで可愛い女の子としゃべれてよかったじゃん！ 僕に感謝してよ。じゃあ記事よろしく」と言い残し、鬼デスクは夜の街に颯爽と消えていった。
街を練り歩いていたパリピたちの多くも、クラブやカラオケなど、室内に逃げ込んでしまったようだ。寒いし、足も痛くなってきたし、ハロウィンナンパものAV借りあさりたいし、帰ろうと思う。
……パリピ。つまりパーティーピーポー。軽いノリで明るく騒ぐ、ハロウィンパーティー大好きな人々。彼らはけっこういいヤツだった。そして漫画がけっこう好きだった。
僕はちょっぴり彼らが好きになった。それは朝方に観たハロウィンナンパものAVのおかげかも、しれないが……。
