
あんなに暑かった夏が去り、秋本番となりました。秋といえば、パンですね! そこで思い出すのは、大量の食パン備蓄を抱え、必死に生き延びようとした『絶滅世界で食パンを』の、イカルとアトリとその一行。彼女たちは限られた食材、調理法で工夫を凝らして食パンを美味しく味わってきたわけですが、まだまだ食パンには可能性があるのではと、「ロイヤルブレッド」や「ダブルソフト」などの定番人気商品を生み出している“食パンのプロ" 「山崎製パン」さんに突撃! そのやり取りには、私たちの食生活を豊かにするヒントが隠れていますので、最後までどうぞお付き合いください。 (なぜイカルが山崎製パンを訪れることができたか、時空の歪みなどについてはツッコまないというお約束で…)
登場人物

- …松本さん 山崎製パン株式会社の広報担当。

- …山本さん 山崎製パン株式会社のアレンジレシピの開発担当。

- …イカル 生まれ育った「ソゴシエの里」を捨てて、食パンの備蓄を命綱にサバイブ中。
毎日食べても飽きずに美味しい、食パンメニューとは
イカル
私たちは、食パンだけを食べて生きていくという状況が続いているんですが、そんな中でも食べるたびに、新しい発見があったりします。
松本
美味しいパンは焼かずにそのまま“生”で食べてもその美味しさが味わえます。世間ではお手頃に買えるパンもありますが、生で食べるとそのしっとりさややわらかさなどの差がはっきりと出ます。
イカル
何が違うんですか?
山本
やはり製法の違いです。
松本
小麦粉も違います。当社の食パンは、雑味がなくて美味しい小麦粉を使っています。
イカル
私たちが食べている「100年食パン」は、どういう小麦粉を使っているんだろう…。

松本
100年経っても味が変わらない食パンとはすごいですね! どう工夫しているのか興味があります。毎日食べる食パンは、「食べやすさ」が第一です。いわゆる高級食パンに代表される甘味のある食パンも人気ですが、日々のアレンジは難しくなると思います。
イカル
甘い食パン! 私たちも水飴を使ったりはしているんですが…。そういうことではないですね。
山本
高級な食パンは、贈答用として最適ですが、イカルさんたちのように毎日食べるとなると…。
松本
毎日食べるもの、普段使いにはやはりシンプルな食パンのほうがいいのではないでしょうか。
イカル
毎日どころか毎食食パンですから! ところで私たち、限られた食材で食パンを美味しく食べたいという希望があるんですが、私たちのような条件で何か素敵な献立をご提案いただくことってできますか?
山本
はい、せっかく来ていただいたので、たくさんメニューをご紹介します! まずは王道の「タマゴサンド」です。普通ならマヨネーズを使うのですが、イカルさんたちはマヨネーズがないので、替わりにオリーブオイルと塩、ブラックペッパーで作れるのではないかと。たしかイカルさんたち、鳥を捕まえていましたよね。
松本
卵もありますし。
イカル
はい、西の街から来た路弾が捕まえてくれました。

山本
ちょっと水を入れるとしっとりしたタマゴサラダができるという点がポイントです。イカルさんにぜひお伝えしたかったポイントです。
松本
ロイヤルブレッドは今年に入ってさらに美味しくリニューアル、トーストはもちろん、生で食べた時の美味しさもアップしました。このタマゴサンドのように、焼かずに生で食べるには、ロイヤルブレッドが最適です。



生地にはバター風味を感じるので、焼いてももちろん美味しい。
イカル
なるほど〜油もあるし、これなら作れますね!
松本
ぜひ「ロイヤルブレッド」で作ってほしいです!
イカル
トーストしないで、そのまま食べたほうが美味しいんですね。
食パンの耳も、美味しく食べられる大切なパーツ。
山本
もう一つオススメメニューがあります。「超芳醇」を使って、ハンバーガーのセットを作れる、というものです。食パン2枚を丸くくり抜いてお肉を挟みます。くり抜いて不要になったパンの耳は、イカルさんたちは砂糖をまぶして揚げていましたけど、ここではフライドポテトのように細長くカットして、塩で和えて揚げます。これで、即席ハンバーガー&ポテトセットの出来上がりです。


もっちりとした食感で、和風の具にもマッチする。
イカル
パンの耳がフライドポテトに⁉︎ 耳って使い勝手はいいんですか?
山本
実はそうなんです。アレンジはいろいろありますが、おすすめはプリンです
イカル
プリンって、あのプルプルンとしたプリンですか??
山本
そうです。フレンチトーストを作れば、それがいわゆる「パンプディング」になります。
イカル
昔、本で読んだことがあるんですが、グラタンみたいなものですか?
山本
そうです。ただイカルさんたちの生活には牛乳がないので、豆を漉して豆乳を作ることができれば大丈夫です。
イカル
豆さえ見つけられたら、やってみます! アトリやレオが喜びそうですし。

山本
ところで、先ほどのバーガーのように、食パン2枚で具材をはさみ中身をくりぬけば、いわゆる「ランチパック」ができます。まーるい「ランチパック」です。あと私たちは、スーパーマーケットの一画をお借りして、親子を対象にしたサンドイッチ教室をすることがありますが、その時にくり抜いて残ったパンの耳と生クリームとジャムを使って「パフェ」を作ることもあります。こういうメニューを1時間ほどかけて店頭で提案するような食育活動をしています。
松本
お客様に直接接しながら、食べ方の提案──サンドイッチ教室などを、マーケットクルーと呼ばれる社員が行っています。山本はそのクルーの元締めです。
山本
そうです、元締めです(笑)。ですので、もう少しメニューを提案させてください。「超芳醇」は湯ごね製法で作られている食パンなのですが、「お湯でこねることにより、噛めば噛むほど甘みが出る」さらに食感もモチモチした食パンです。つまり「お米に近い」食感です。そこで、和風な食べ方も提案しています。たとえば海苔で巻いたスパムサンドのように、意外にも海苔が合ったり、きんぴらごぼうの醤油味なども合います。パンではありますが、おむすびのようにも食べられます。
イカル
え、おむすび…ですか? 食べたい…!
山本
イカルさんたちがいつかリンゴを見つけられることをを信じて、「超芳醇」で作るアップルパイもご紹介します。ポケットサンドにして、その中にリンゴを入れます。

イカル
中には何を入れてもいい感じですね。
山本
そうです、なんでもいいです。なんでも入れることが大得意なのは「ダブルソフト」です。厚みがある食パンなので、お子様でも手で半分に割くこともでき、切れ目を入れてポケットにすることもできます。

トーストすると、柔らかくサックリとした美味しさ。耳が薄いのでボリュームのわりに食べやすい。
山本
形が面白いレシピも紹介します。
食パンが持つ「無限の可能性」
イカル
切ったりするだけで、見え方が変わるのは面白いですね! ところでお二人に質問なのですが…私たちが毎日食べている「100年食パン」は、 特別製法で保存が効くようになっています。でも、普通の食パンは賞味期限が長くて1週間程度なんですよね。少しでも長く、食パンを美味しく食べられる方法って、 あるんでしょうか。
松本
食パンは、実は冷蔵庫が一番苦手です。冷蔵庫に入れると、食パンに含まれるデンプンが老化してしまいます。できれば新鮮なうちに1枚ずつラップを巻いて、ジッパー付きの保存袋などに入れて冷凍するのがベストです。食べる際にはトーストすれば、おいしく食べることができます。
山本
トーストする時には、まず先に、トースター内を温かくしてからパンを入れることをオススメしています。そうすれば素早く焼き上がるためパサつくこともなくなります。

イカル
ためになるお話をありがとうございます。私たちの倉庫に電子レンジを見つけたので、トースター代わりに使えないか、いろいろ試してみます。ちなみに、世の中には他にもたくさんの食パンが出ていると聞きました。他社からすごい食パンが出てきたらどうするんですか?
松本
定期的に他社の食パンを食べる、つまり定点観測のようなことは行っています。味を確かめ、値段もチェックします。
山本
定点観測は社内でも行っています、当社には食パンを造っている工場が25ほどあります。各工場で製造した食パンを定期的に集めて、どこでも均一の品質になっているかを確認します。味や焼き色などのチェックです。
イカル
わあ、自分に厳しいんですね〜。食パン作りがお仕事になると、味わうという気持ちは胸にしまってチェック第一となりそうですね。そんな山崎製パンさんに改めて、食パンの魅力を伺ってもいいですか?
山本
食パンは、一言で言えば「個性豊か」です。毎朝の朝食として食べる食パンがあれば、災害時の非常食として有用になる場合もある。イカルさんたちのサバイバル世界でも食パンがお役になっていることがとてもありがたいです。手に取った人の状況によって多様な顔を見せる、いろいろなストーリーがあるものなんです。そういえば、日本の東と西でも食パンの顔が違います。東では薄切り、西では厚切りが売れます。エリアが違うと食パンの顔も違います。
松本
関西では以前から5枚切りが主流です。厚みがあってモチモチしているほうが人気です。関東では6枚切りが主流です。
イカル
食パンのいろいろな顔…私たちもおいしいパンでなんとか命を繋いできましたけど、ボロボロなパンにも出会いました。でも、どちらにせよ食パンを見つけていなかったら、今ごろどうなっていたか…。

松本
イカルさんが「食パンには可能性がある」と言っていたと思います。私たちはその言葉に共感していました。生で食べても、トーストしても、サンドしてもおいしい食パン。イカルさんたちのアレンジを見ていても、やっぱり食パンには可能性があるなと再確認できました。
イカル
私たち、それしかないので、食パンの可能性を極めていきたいですね。食パンさえあればやっていけるといいですね。食パンが争いの種になってしまって、取り合いはこれからも続くかもしれませんけど、食パンの美味しさはみんな共通なので、いつか食パンのもとで、みんなが仲良く生きていけるような日が来てほしいと思っています。
松本・山本
イカルさんをはじめ、皆さんのこれからの食パンライフを応援しています!
イカル
ありがとうございます! 読者の皆さん、今回山崎製パンさんから教えてもらったレシピ、私と一緒に試してみてくださいね。
『絶滅世界で食パンを』あおいましろう 全3巻発売中!
第1話試し読み
↓サクサク読みやすいアプリのDLは↓




