『おおきく振りかぶって』は、ひぐちアサが雑誌「アフタヌーン」で2003年より連載中の青春高校野球漫画。2018年2月に舞台化もされ大好評を博した。今回はその第2弾・舞台『おおきく振りかぶって 夏の大会編』(以下、「夏の大会編」)が9月6日(木)に公演初日を迎えるにあたり、主人公・三橋廉役の西銘駿(にしめ しゅん)さんに、公演に向けての意気込みを伺った。
- 西銘駿 (男劇団 青山表参道X)
1998年2月20日生まれ、沖縄県出身。
2014年、第27回「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」グランプリ受賞。
2015年〜テレビ『仮面ライダーゴースト』主演(EX)、舞台『おおきく振りかぶって』主演、男劇団 青山表参道X旗揚げ公演『SHIRO TORA〜beyond the time』、『ダンガンロンパ3』主演など。
今後、主演ドラマ・映画『理系が恋に落ちたので証明してみた。』、映画『走れ!T校バスケット部』、『愛唄―約束のナクヒト―』が公開予定。
「マウンドは譲らないという覚悟だけは誰にも負けない。気弱なのに気弱じゃない、ひとつ貫いているところがかっこいい」
■舞台「夏の大会編」は三橋廉の成長物語
──まず、舞台第2弾が決まった時のお気持ちを教えてください。
前作が自分にとって初主演の舞台だったので、再び演じられることになってすごくうれしかったです。『おお振り』は、熱血スポ根的な部分とほのぼのとした日常の話がマッチした作品。舞台でもその雰囲気を大切にして、自分自身も前作でとても楽しく演じられたんです。
勉強会をしようと西浦高校野球部の面々が三橋の家に集まった際の一幕。実はこの日は、三橋の誕生日。田島の発案で、急遽バースデーパーティーがスタート。友情の温かさがあふれる名シーンだ。
──『おお振り』については、「ほのぼのとしていいな」という印象でしょうか。
そうですね。全体的に癒されます(笑)。ライバル校のキャラも嫌味がないし、すごくリアルで、「あー、高校生だな」って思うんです。合宿でわいわいやっている話とか共感できる部分がたくさんあって、そこは特に舞台で表現していったところなので、演じていて楽しかったです。とても良い雰囲気でできた舞台だったので、またやれるということで、すごくテンションが高まっていますね。
──三橋は弱気で卑屈、おまけにビビり。そんな独特なキャラクターを演じられていかがでしたか。
三橋は、僕とは性格が違っているし、最初は好きになれなかったんです(笑)。
強豪・桐青高校との試合後、三橋は緊張と疲れから熱を出してしまった。揃って見舞いに来た西浦メンバー。この時の三橋と阿部のやりとりは、まだまだぎこちない。
前回の舞台では三橋が中学時代に孤立していた話もあって、主人公っぽくないなって思っていました。でも、台本を読み込んでいくうちに、好きが増していきましたよ。みんなが三橋の良さにどんどん気づいて、彼の頑張りについていくようになるのが、『おお振り』の良さですね。
僕も今では、三橋廉という役がとても好きです。なかでも、「マウンドは譲らない」という覚悟だけは誰にも負けない、気弱なのに気弱じゃない、ひとつ貫いているところがかっこよくて、大好きです。
夏の大会に向けて控えピッチャーを育てると監督が言い出した。「もう一人投手がいたらマウンドをとられちゃう」と泣いて嫌がる三橋。ワンシーンに気持ちの強さがあらわれている。
──今回、演じる上で気を付けたポイントを教えてください。
阿部君との距離感ですね。前回の舞台では挨拶を交わすことさえ困難だった関係から、どこまで仲良くなったのか。三橋は阿部君のことをどう思っているのかを、改めて考えました。前回の舞台から半年経っていたので、当時のことを思い出して、三橋たちの成長ぐあいをメンバーとすり合わせていきました。
──前回の初主演の時と比べて、ご自身が成長したと感じるところはありますか。
すごく落ち着いた気持ちで演じられるようになりました。前回は初主演ということもあったし、三橋の気弱な感じを出さないといけなかったので、余裕がなかったんです。
今回は頑張っている三橋をかわいいって思ってもらえるように、アドリブもいれるようにしています。ここは公演ごとに変えられるんじゃないかとか、色々と考えて演じるようになりました。
──三橋がさらに成長する姿を見られるのでしょうか。
そうですね。三橋がどういう成長をとげるのか、楽しみにしているファンの方も多いと思います。今回は、エースとしてみんなを引っ張る三橋がどんどん完成されていくので、すごく感慨深いです。どんなきっかけでどう成長するのか、「三橋なんだけど三橋じゃなくなっていく」様子を、細かく再現していきたいです。
■大きな壁を乗り越える三橋たちを見守ってほしい
──今回、美丞大狭山高校や崎玉高校などの登場人物が増えましたが、新しいメンバーとの関係はいかがですか。
新しいメンバーとも、すでに一緒に稽古をしています。みんなユーモアがあっておもしろいし、一緒にいると、自分たちは高校生なんじゃないかって勘違いするくらい、元気いっぱいなんですよ。『おお振り』は、どこか高校生っぽい、やんちゃな人たちを呼び寄せるんですかね(笑)。
稽古が終わった後にみんなで野球をやったりして、よくスタッフに怒られています。「舞台のための練習です」って言ってるんですけど、完全に遊びですよね(笑)。稽古をしていく中で、『おお振り』という作品だけではなく野球も好きになって、みんなで遊ぶうちにメンバー同士も仲良くなりました。
──『おお振り』チームで率先して遊びはじめるのは誰でしょうか。
いつもみんなの真ん中にいるのは、阿部役の猪野広樹君かな。遊びに長けているので、遊ぶ時のリーダーシップは彼が一番ですね。たとえば、2チームに別れて戦う時は、絶対に猪野君がチームリーダーをやっているんですよ。僕は、リーダーに乗っかって一番はしゃいでいる人です(笑)。三橋とは違って悪ふざけが過ぎるタイプで、田島君や水谷君が近いかも。
──今回の舞台で、西銘さんが好きな相手チームはどこですか。
崎玉高校の3人。小山君、市原君、大地君の関係性がすごく好きですね。小山君は、厳しくしたら部員が辞めちゃうのかなって気にして、優しく振る舞っている。市原君はすごく頑張っている投手。真面目さから、小山君に「今年が最後なのになんでそんな呑気にやってんだよ」って怒ってしまう。大地君は天才なのに、注意されたことをすぐに忘れてしまうとか、ちょっとバカっぽいところもあってすごく良いんです!
崎玉の3人を見てるとにこやかになります。なんかもう、倒したくなくなる(笑)。崎玉戦は、濃いなとか、味があるなっていうシーンが結構ありますね。僕は特に、大村わたるさんが演じる小山君の雰囲気がすごく好きなんです。
夏の大会で西浦高校と当たった崎玉高校。昨年は部員不足で出場していなかったが、「10割バッター」と呼ばれる1年生・佐倉大地の加入で勝ち進んできた。
──今回の舞台の見どころや、西銘さんが一番大事にしているポイントを教えてください。
前回の西浦は勝利続きでしたけど、今回は初めての大きな壁にぶち当たるんです。それを乗り越えるために西浦のメンバーたちがどう動いてどう感じているのか、という部分を見せるシーンがたくさんありますね。三橋と阿部君だったり、花井君と田島君だったり、それぞれがどう思っているのかわかるので、キャラクターをもっと好きになれると思います。
三橋にとっても成長物語ですね。これまでは、「みんなが助けてくれてるから自分はエースできるんだ、エースやってもいいんだ」っていう気持ちでした。でも今回は、「自分がエースなんだ」って信じられるようになっていると思います。
アクシデントに見舞われ、緊張からプレイにミスが出た美丞大狭山高校との試合。三橋の一声がチームの空気を変えた。試合中に三橋が声を張り上げたのは、この時がはじめてだった。
少し大きくなった三橋の背中を見ていただけるとうれしいです。おじいちゃん、おばあちゃんや、親御さんになった気持ちで、温かい目で見守ってほしいですね。「成長したな、あんなだったのにな」って、ちょっとホロリとしてください(笑)。
──西銘さん、ありがとうございました。
西浦高校野球部の保護者たちが揃って応援。高校野球観戦ベテランの花井一家もいれば、はじめて試合を見る三橋の母親のような保護者もいる。
舞台『おおきく振りかぶって 夏の大会編』公演概要
【東京公演】
会場:サンシャイン劇場
日程:2018年9月6日(木)〜17日(月・祝)
【大阪公演】
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
日程:2018年9月28日(金)〜30日(日)
舞台『おおきく振りかぶって 夏の大会編』公式サイト
http://oofuri-stage.com/