こんな衝撃的なセリフで始まる『大上さん、だだ漏れです。』(吉田丸悠 著/アフタヌーン連載中)を、書店やネット上の広告などで目にしたかたは多いかもしれない。セリフのインパクトから「ネットウケを狙ったちょいエロラブコメだろ」と思って未読のかたに、この作品の魅力をお伝えしたく筆をとりました。
ひとことで言うと、「コミュニケーション方法が多様化した現代に生きるすべてのひとに読んでほしい」です。
女子高生の大上(おおがみ)さんはエロいことに興味しんしんだが、中学時代のある出来事からそれをひた隠しにしていた(教室で男性器に関する本を読んでたりはしますが!)ぼっちな子。ある日、クラスメイトの物静かなイケメン・柳沼(やぎぬま)くんと倉庫の整理をすることになった彼女は、彼の重大な秘密を知ってしまう――。
なぜか彼に触れてしまうと相手は本音を口走ってしまうため、柳沼くんは他人とのかかわりを極力さけて生活していたのだ。その体質を「プラスにできないか」という大上さんに対し、柳沼くんは「僕と大上さんが友達になる」「友達第1号として友達の練習をしよう」と提案、ふたりの不思議な関係はこうして始まった。
「戦争映画大上映会」を観に行って柳沼くんが倒れたり。
コワモテだけど純粋で心優しい松隈(まつくま)くんと交流したり。
大上さんと柳沼くんが出会ったことで、彼女たちの世界は少しずつ広がりを見せ始める。
本作は柳沼くんの体質により、ひとには言えない心の声が思わず漏れてしまうシーンが頻出する。
<心の声の一例>
「舐めたい耳をしている」
「ワキ毛どのくらい生えてる?」
「まつ毛がエロい」
赤面である。穴があったら入りたい、というか穴を掘って自らを埋めたいレベルである。だけど、本作のキャラクターはこれらをきっかけに本音でぶつかり合い、心の距離を縮めていく。
その結果、少し前まで見れなかった場所まで彼女たちを連れていく。
そう、この物語では「誰かと誰かが出会い、お互いのことを知ることがどれほど運命的であるか」が描かれている。
現代ではSNSが日常の一部になってコミュニケーション方法が多様化し、本来の意図とは違う取られかたをされたり見知らぬ誰かから攻撃される危険性もあるけれど、ほんの少し勇気を持って誰かとつながれば自分の世界が豊かになる可能性をこの作品は教えてくれる。
『大上さん、だだ漏れです。』が読んだひとの背中をそっと押し、新しい世界を知るキッカケになることを願っています(ただ、だだ漏れしすぎて社会的にアレな感じにならないようには気をつけて!)。
そんな『大上さん、だだ漏れです。』の単行本1~4巻が好評発売中!
第1話は無料で試し読みができますので、この機会に大上さんのだだ漏れ具合を確かめてみてください!