ルール無用の物語が読みたい!
読者の皆様は様々な物語を見て思ったことはないでしょうか。
卑怯な手を使う相手にあくまで正々堂々と戦う主人公に、「やられたのだからやり返せ。ルール無用でやってしまえ」と。
複数の異性に言い寄られながら曖昧にはぐらかす主人公に、「勿体ない。全員と結ばれてしまえ」と。
筆者は常日頃、色々な物語を見てそう思っておりました。
巨大サイト最大のメリットは「自由」
「小説家になろう」というサイトがございます。
サイトの小説掲載は90万作を越え、登録ユーザ数は230万人を超える、日本最大級の小説投稿サイトであり、ここにまず投稿されてからライトノベル、コミック、アニメと展開していく作品が一つのジャンルを形成するほど多くなっております。
「小説家になろう」サイト最大の利点はなんといっても「自由」に書けることでしょう。
一話当たりの文字数や更新速度はもちろん自由、主人公の強さをとんでもないことにしてもよいですし、世界を渡り歩いてもよく、自分のノートに書くように自由に書き綴れます。
書き上がった作品をサイトの知名度を生かして多くの人に見てもらって、1話単位で感想・評価してもらえる素晴らしい場です。
何の経験もなく、思い付きで物語を書き始めようとしていた筆者にとっては非常にありがたく、このサイトにて投稿を開始させていただきました。
「野蛮人」主人公の誕生
こうして筆者は「小説家になろう」作者の端くれとして『王国へ続く道』の投稿を開始したのです。
『王国へ続く道』を始めるに際して、筆者はとにかく好き放題に書き進めていきました。
なにしろ物語を書いた経験はなく、決まった手法や押さえておくべき展開などまるでわからないのです。なれば好きなようにやり散らかして出たとこ勝負、不都合が出れば直せばよいの精神でやってやろうという、適当で野蛮な発想がそのまま主人公の形となっていったわけです。
こうして乱暴に生まれた主人公エイギルですが、絶対無敵ではありません。
もちろん主人公ですから十分以上に強いのですが、肉体的に強いだけなので剣で切られれば血を流しますし、矢は避けねば命に関わります。巨大な魔物や未知の魔法に吹き飛ばされることもあり、伝説の魔法も使えませんし、世の中をひっくり返すような超能力もありません。
では放題に書き進めたのはなにか、それは主人公の性格、考え方です。
木剣での試合中に相手がルール違反のずるい動きをします。普通に考えれば逆手にとって相手を酷い目に合わせたり、ズルを暴いて罰せられるようにするのでしょうが、主人公はなんと相手を殺してしまいます。
どう考えてもやり過ぎなのですが、主人公には微塵の後悔も葛藤もありません。腹が立ったからやった、それ以上の理由はありません。
また複数の女性から想いを寄せられたならば躊躇なく片っ端から手を出します。隣に関係を結んだ女性が居ても他に美女が居れば、初対面であろうと敵であろうと口説こうとします。周囲の目など気にもせず、身内の女性に締められても謝りながら続けます。
そしてひとたび戦争になれば、無辜の民がどれだけ犠牲になろうと、特に思うところもなく、彼らの悲運に涙することなどあり得ません。「まあ仕方ないんじゃないか」程度です。気にするのは女性の安全のみです。
そして全ての葛藤を吹き飛ばし本能と直情のみで暴れ回る主人公エイギルの誕生となります。
現代日本では絶対にできない無茶苦茶をファンタジー世界で主人公にやってもらい、フラストレーションを発散していこうというわけです。
構想初期にはあまりにやり過ぎて野蛮人を通り過ぎ、不愉快なオークのようなイメージになってしまって「これは違うぞ」となり、少々のコメディ要素を入れた結果、ちょっと抜けつつも本能で生きる主人公が完成したのです。
もし小説家になろうという場がなく、様々なコンテストなどに応募していたならば、きっと主人公はここまでのやりたい放題はできず、もう少し品行方正で弱者に優しい正義感溢れる男になっていたかもしれません。
または世に出ない可能性もあり……いや、可能性は高かったでしょうけれど。
大量の女性キャラを好き放題に出したら年齢制限に
次に、本作には主人公の女好きもあって大量の女性キャラが出てまいります。正直に言って過剰な数になっております。
ここもまた筆者の好き放題『出したくなった女キャラは全部出す』のスタンスでした。
もちろん際限なく出せば物語に関与しないキャラも増えてしまうわけですが、そんなもの知ったことかと強行いたしました。
これだけの無茶をやりつつ物語を無理やり回す、ある意味でのご都合主義を展開できたのは、小説家になろうサイトの「自由」があってこそでした。
とはいえ、自由にやり過ぎてしまい、連載の途中で年齢制限のある別サイトに移動することになってしまいました。
一時は中止にしようかと思ったりもしましたが「誰の目を気にするわけでもなし。やりたいことを書ききるまではやってやろう」と書き進めた結果、止まったり間延びしたり寄り道したりと無駄な動きも交えつつ、5年かけてようやく本編完結となりました。
投稿開始前は漠然と半年ぐらいで終わるかなと想像していましたが、終わりを際限なく伸ばすことができることも、また自由というものです。
『王国へ続く道』はその5年の間に書籍化が決定し、今も続刊を出していただけている、筆者の代表作となりました。コミカライズ版も版を重ねる好評をいただいています。
現在はコミックデイズにて連載中のコミック『潰国のユリウス』の原作を書かせていただいており、その執筆においても『王国へ続く道』で好き放題にやった経験が生きております。
もちろん『潰国のユリウス』で好き放題するわけにはいきませんので、本作内で筆者が暴走しかけるも、自制心を取り戻して道に戻っている様子を想像していただけると幸いです。
作者が楽しむことで、読者も楽しめる!
ともあれ、それなりの長編となった投稿連載を終えて思ったのは「非常に楽しかった」です。
思うがまま、好き放題に書き進めているのですから楽しくないはずがありません。
やりたい話を次々とやり、出したいキャラを出し、少々の無理な展開であっても主人公を暴れさせる。綺麗にまとまることもあれば、矛盾を残したまま進むこともありました。話の中で伏線が消失したこともありました。
そして様々な不手際に反省はしつつも思うのは、娯楽作品は結局「面白ければよい」のではないか、ということです。
改めて話を読み返してみると、様々な伏線を綺麗に繋いで上手くいったと自己満足していた回よりも、やりたい展開だけを主題に据え、他は勢いだけで押し通して書き散らかした乱雑な回の方が筆者自身で見ても面白く、感想での評判もよいといったことが多々ありました。
そして『綺麗にまとめた回』よりも『勢いで書き散らかした回』の方が筆者の中では非常に楽しく書けていたように思うのです。
つまり少々の矛盾やご都合主義の整合性をとっていくよりも、勢いのままに突き進んだ方が読者も作者も幸せになるのではと思うのです。
娯楽小説は面白いのが一番、これに尽きます。
もし小説を書きたいと考えている人がいるならば、自分一人で書き溜めるよりも、是非投稿してみてください。年齢制限以外の何事にもとらわれる必要はありません。貴方が好き放題に書いた物語を何万何十万という読者が評価してくれます。
やり過ぎて途中で破綻してしまったり、評価されなくても、次に生かせばよいのです。無料投稿サイトなのですから、やめるも変えるも自由です。
そして物語が面白いと評価されれば、書籍化やコミック化などの道が拓けます。
そうなれば作者は趣味でお金を得ることができ、読者は新たな面白い物語に触れることができます。
ライトノベル、コミックの業界もまた一つ広がります。素晴らしいことではないでしょうか。
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