『トネガワ』に出てきた会長の機嫌判定法は『カイジ』本編で通用するか

「カイジ」の兵頭会長。本当に眉毛の角度で機嫌がわかるのか、全巻読んで検証してみた。

初めまして。国府町怒児(こうまちぬんじ)と申します。
突然ですが、皆さん『中間管理録トネガワ』という漫画をご存知でしょうか。

 
中間管理録トネガワとは

 

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(『中間管理録トネガワ』1巻表紙 参照)

 

『中間管理録トネガワ』は、2015年より月刊ヤングマガジンで連載されているギャグ漫画です。
『賭博黙示録カイジ』の登場人物である利根川幸雄の、中間管理職としての一面をコミカルに描いたスピンオフ作品になっています。
原作である『カイジ』の世界観をギャップとして利用した手法が受け、このマンガがすごい!2017年のオトコ編で1位を受賞するなど破竹の勢いをみせています。

 

こちらの作品で、私は興味深いシーンを見つけました。

 

 

眉毛の角度

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(『中間管理録トネガワ』2巻41p参照)

 

利根川の勤める帝愛グループのトップ、兵藤会長の機嫌は眉毛の角度で分かるというものです。

兵藤会長は、『カイジ』本編のラスボスと言っていい存在です。
組織のトップに君臨する王であるためか、凡人とはおよそかけ離れた感覚を持っています。
それが下で働く者にとっては理解しづらく、特に『トネガワ』では気まぐれで気難しい性格として描かれることが多いです。

 

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(『中間管理録トネガワ』2巻41p参照)

 

しかし、かつて兵藤会長の直属で働いていた黒服(山崎)のこの発言で状況は変わります。
会長の眉毛の角度が0度から40度のときに近づけば、概ね穏便に話が進むというのです。
利根川にとってこれは朗報です。
天気予報を見て外へ出るのと見ずに外へ出るのとでは、雨に濡れる確率は大きく違いますからね。

 

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(『中間管理録トネガワ』2巻41p参照)

 

となると、気になってくるのはこの情報の信憑性です。黒服自身も、「必ずしもこの法則が正しいとは限りません 時には例外もあります」(『中間管理録トネガワ』)と言っていますが、果たしてこの法則はどの程度当てはまるのでしょうか。

 

そこで、『カイジ』本編に出てきた兵藤会長の眉毛の角度を測り、機嫌との相関を見ていこうと思います。

 

 

レギュレーション

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(『賭博破戒録カイジ』13巻94p参照 赤字筆者)

 

①兵藤会長の顔の出てきたコマの両眉毛の角度を分度器で測る

②眉毛の角度は、鼻筋に垂直な横線と、眉頭と眉尻を結んだ直線の交わった角度とする

③会長側から見た右を右眉、左を左眉とする

④機嫌度(上機嫌=5、やや上機嫌=4、ニュートラル=3、やや不機嫌=2、不機嫌=1)を併せて記載する

⑤機嫌度がどこに属するかは、作品の文脈から筆者が独断で決める

⑥作品の範囲は2017年10月25日時点までの以下の作品とする(ただし『和也』編で会長は一コマも登場しない)

・『賭博黙示録カイジ』

・『賭博破戒録カイジ』

・『賭博堕天録カイジ』

・『賭博堕天録カイジ 和也編』

・『賭博堕天録カイジ ワン・ポーカー編』

 

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(『賭博破戒録カイジ』9巻94p参照 赤字筆者)

 

⑦横顔の場合は、顔の傾きに垂直な横線と、眉頭と眉尻を結んだ直線の交わった角度とする

⑧横顔その他片方の眉毛のみ測定可能な場合は、両眉を同じ角度としてみなす

⑨後姿、吹き出し被りなどによって両眉とも測定不能な場合は、測定不能とし、サンプルから除外する

⑩相関係数は、小数点第2位を四捨五入した値を表示する

 

長くなりましたが、レギュレーションは以上です。さっそく角度を見ていきましょう。

 

 

初登場シーン

 

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(『賭博黙示録カイジ』8巻194p 参照)

 

まずは記念すべき、兵藤会長のご尊顔が初めて明らかとなったシーンです。この時点では、得体の知れない不気味さを醸し出していますね。


このときの眉毛の角度は、右眉-6度、左眉-10度です。
最初はマイナスから始まっています。
黒服の基準で言えば、かなり穏やかな状態と言っていいでしょう。
実際、登場直後の145pでは、主人公のカイジをEカードというゲームに誘うと同時に、「フフ……」「ククク……」と二回も笑っています。
眉毛の法則は、当てはまっていますね。

 

 

初めての怒り

 

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(『賭博黙示録カイジ』10巻123p 参照)

 

続いては、会長が初めて怒るシーンです。先述のEカードというゲームをカイジと利根川でやっていた際、イカサマを使っているにも関わらず利根川が負けたことに腹を立てています。


このときの眉毛の角度は、右眉18度、左眉18度です。早くも眉毛神話が怪しくなってきました。初期の頃は、烈火のごとく怒るというより、冷たくしつこくなじることに重点を置いていた結果でしょうか。利根川を叱責する場面は数頁に渡り続くのですが、その間で眉毛が40度を越えていたコマはありませんでした。


『賭博破戒録カイジ』編以降の怒り

 

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(『賭博破戒録カイジ』10巻26p 参照)


とはいえ、続編に当たる『賭博破戒録カイジ』では、割と分かりやすく怒る性格にシフトします。この辺りからは、眉毛と機嫌の連動も取れてきます。
こちらは、沼という名前のパチンコ勝負での場面です。カイジとの勝負を一方的に中止にしようとした一条に対して、兵藤会長が電話で怒りの待ったをかけてきます。角度は、右眉39度、左眉51度でした。

 

 

悪魔の愉悦

 

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(『賭博黙示録カイジ』12巻124p 参照)


今度は逆に、会長が愉快に感じる場面も見ていきましょう。
Eカードで破れた利根川に、焼けた鉄板の上での土下座を履行させるシーンです。
兵藤会長は、こういう人が酷い目にあっているのを見て喜ぶ嗜好があります。


眉毛の角度は、右眉24度、左眉22度です。

 

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(『賭博黙示録カイジ』13巻175p)

 

その後、カイジとのクジ対決で2回目にして当たりクジを引き当てたとき、眉毛が吊り上がる現象が観測されました。
このときはなんと、右眉50度、左眉46度もありました。どうやら会長は、極度に愉快になったときも眉毛の吊り上がるようです。黒服の言っていた例外パターンとはこれのことでしょう。


あれ?と思いませんでしたか?不愉快なときも眉が上がり、愉快なときも眉が吊り上がる。じゃあ何を目安にすればいいんだ?と。
そんなとき、私は口角の上がり方で判断することをお勧めします。

 

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(『賭博破戒録カイジ』9巻114p 参照)


口角が上がっていれば上機嫌。

 

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(『賭博破戒録カイジ』1巻15p 参照)


口角が上がっていなければ不機嫌です。

 

 

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(『賭博黙示録カイジ』13巻71p参照 筆者改変)


では問題です。
この会長は怒っているでしょうか?それとも、喜んでいるでしょうか?

 

 

 

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(『賭博黙示録カイジ』13巻71p 参照)

 

正解は、喜んでいます。
カイジが無茶な勝負を引き受けてくれた興奮で、眠気が吹っ飛んだ場面ですね。

 


その他

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(『賭博堕天録カイジ』11巻74p 参照)


『賭博堕天録カイジ』以降は、兵藤会長の出番はグッと減ってしまいます。
その中にあった、やけに爽やかな笑顔の会長です。
眉毛の角度は、右眉15度、左眉22度でした。
こういうときを狙って、限定じゃんけんなどの企画書は通したいですね。

 

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(『賭博堕天録カイジ』6巻142p 参照)

 

利根川との笑顔のツーショットも紹介しておきます。右眉30度、左眉34度でした。

 

トータル成績

 

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以上を踏まえた、全調査対象の結果です。


兵藤会長の登場したコマ数は、『黙示録カイジ』が1006コマ、『破戒録カイジ』が203コマ、『堕天録カイジ』が15コマ、『ワンポーカー編』が8コマでした。
やはり直接対決のあった「黙示録」に、多く登場していますね。
その内、計測可能だったコマは、428コマでした。


気になる機嫌度との相関係数ですが、右眉-0.08、左眉-0.10と、殆ど相関がないという結果になってしまいました。
会長の機嫌がいいときも眉毛の角度が吊り上がるため、関連が薄くなっているのでしょうか。
この数値を見ると、機嫌の目安にはなりづらそうです。さらに、中々人間の眉毛の角度は40度を越えないようで、激情型の兵藤会長を以ってしても、右眉で6コマ、左眉で8コマしか40度以上の場面は観測できませんでした。


口角の角度と機嫌度の相関係数も調べてみたのですが、こちらは右口角で0.70、左口角で0.73と眉毛の角度よりは当てにしてもよさそうな結果が出ました。
黒服達と情報共有できるなら、口角を基準にした方がいいと伝えたいですね。

そうそう。黒服で思い出しました。黒服の言っていた「例外」についてですが、調査する中で2パターン見つけました。1つは先述の、「極端に機嫌がいいとき」です。で、もう1つは…。

 

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(『賭博堕天録カイジ』8巻74p 参照)

 

「顔が歪んでいて測定ができないとき」です。

 

参考資料

『賭博黙示録カイジ 1巻〜13巻』1996〜1999 福本伸行 講談社
『賭博破戒録カイジ 1巻〜13巻』2000〜2004 福本伸行 講談社
『賭博堕天録カイジ 1巻〜11巻』2004〜2008 福本伸行 講談社
『賭博堕天録カイジ 和也編 1巻〜10巻』 2009〜2012 福本伸行 講談社
『賭博堕天録カイジ ワン・ポーカー編 1巻〜14巻』2013〜2017 福本伸行 講談社
『中間管理録トネガワ 2巻』2016 福本伸行、萩原天晴、三好智樹、橋本智広 講談社

 

『カイジ』の最新シリーズはヤングマガジンで連載中です。

スピンオフ作品の『中間管理録トネガワ』も是非。