みなさん、こんにちは。ライターのナカザワと申します。
先週にひきつづき、
『彼岸島』著者・松本光司先生が
ヤングマガジンに載せた「目次コメント」について、
検証していきたいと思います。
前回はこちら
簡単におさらいをいたしますと、
「彼岸島の生活は泣きたいくらい悲惨だけど、松本先生自身は超ハッピー」
という真実が明らかになりました。
しかし、ここで大きな疑問が湧いてきます。
現代社会に強い怨みを抱いているとも思えない松本先生に、
どうしてこんなアナーキーな作品が作りえたのでしょうか?
その謎に迫るためには、もっと調査が必要そうです。
なんせ今のところ、連載初期を中心にごく一部のコメントを見たにすぎません。
連載開始後すぐにご結婚され、作品も大ヒット。
果たしてそんな幸せ一辺倒なお方でなんでしょうか?
本当はドロドロした深い闇がどこかに隠されているのではないでしょうか?
連載中期のコメントを追いました。
【調査結果2】子を思う気持ちがすごい
結論から書きますね。
深い闇なんてなかったです。
その後の松本先生のコメントにはひたすらお子さんの話題が登場します。
さながら成長記録のようです。
2005年51号
子供を撮る為に、デジカメを買いました。
2007年24号
子供が歩くようになりました。
2010年19号
子供は4つになりました。やんちゃです。
2010年35/36号
子どもが生まれました。2人目です。小さい女の子です。
2012年46号
子どもとディズニーランドに行って来ました。まさに夢の国。
2013年21号
家族サービスでディズニーランドに行って来ました。かなりの混みようで、一つの乗り物に四時間並ぶはめに・・。
2013年46号
久々に子どもとディズニーランドに行きます。
と、『彼岸島』中期~『彼岸島 48日後…』開始頃のコメント欄には、
松本先生のパパぶりがいきいきと書かれていました。素敵ですね。
ただ、ひとつ気になったのは、
「久々にディズニーランドに行きます。」
と書いてらっしゃるその半年前と一年前にもディズニーを訪れていることです。
もしかして松本先生は年間パスをお持ちなのでしょうか?
それはさておき、コメントとその週の『彼岸島』とを見比べるうちに、
お子さんの誕生・成長という大きな出来事が作品にも影響する
ことが分かりました。
2005年50号
子供が無事生まれました。よかったです。
「第百三十三話 休息」ここまで無休で戦いつづけた
なにげない光景に見えますが実は、
明たちが島に着き、15巻目にして初めて「休憩するシーン」なんです。
無事に産まれた安堵感・喜びが、彼岸島にも届いたかのような一幕です。
そして5年後。
201035/36年号
子どもが生まれました。2人目です。小さい女の子です。
『彼岸島 最後の47日間』「第1話 亮介」
こちらも島に漂着した亮介が初めて一息ついたシーン。
「うっひょーー」と「生き返る!」のセリフまで、かつてのケンちゃんと同じです。
(でもひとつ違うところがあって、亮介が井戸を覗くと…)
早く気づけ!
また、よりダイレクトに
お子さんと体験したことが反映された(ように見える)シーンもあります。
2010年46号
子どもと上野動物園に行きました。たまにはいいものです。
『彼岸島 最後の47日間』「第10話 葛籠」 こんな動物園はイヤだ
さらに、影響はストーリー展開のみならず、キャラクターにも及びます。
お子さんについてコメントのある号は、先生の気持ちがキャラに伝染。
みんな親の愛が炸裂してしまうのです。
2015年9号
子どもと映画『ナビゲイター』を観ました。かなり楽しめる。
『彼岸島 48日後…』「第21話 騒音」
人だけではありません。
2012年51号
子どもと映画『大恐竜時代』を観に行きました。いいできです。
牛乳女<うしちちおんな> その母乳はヘロイン並の中毒性を持つ
そして、愛娘を殺された師匠も。
2006年19号
子供はかわいいです。
「第百五十話 師匠という男」
……バチが当たりますよ!!
というように、先生の子煩悩さ、そしてお人柄がとてもよく伝わったと思います。
子を思う親の気持ち、
それは人間、邪鬼、師匠、
みんな変わらない――。
僭越ながら松本先生には、明のこの言葉をお贈りしたいです。
『彼岸島 48日後…』「第21話 騒音」
【調査結果3】季節感がすごい
お人柄が分かる、という意味では、このポイントも外せません。
松本先生のコメントには四季折々の言葉、時候の挨拶が多く登場します。
風情に満ちた先生の四季と、『彼岸島』世界の四季。並行して、一年を追ってみました。
まず新年号のコメント。気持ち新たに一年が始まります。
2003年6号
今年は良い年になりそうです。
そのとき『彼岸島』では、
「第七話 沈黙を破る者」 シリーズ初の吸血シーン
正月早々、咬まれてました。
実はここ、『彼岸島』シリーズ最初の吸血シーンでもあります。
書き初めならぬ、咬み初めです。
そして雪解けのあと、やって来る春。
2003年17号
ぼちぼち桜の季節ですね。
彼岸島の春の様子はどうでしょうか。
「第十七話 咬まれる」 失禁&失血で、目つきヤバい
お前もか。
ケンちゃん同様、明も咬まれてました。
やがて、新緑が目にも鮮やかに輝きます。
2005年35号
早くも夏バテ気味です。
彼岸島に夏バテがあるとは思えませんが、一応見てみましょう。
「第百二十話 目玉」 百目型の邪鬼は運動能力が高い
バテるどころか完全に回復してました。
だんだんと涼やかな秋風が吹いてきます。
2004年44号
彼岸花が咲いてますね。
タイトルと季節にちなんだ、風流なお言葉ですね。
では、彼岸島にいる明さんを呼んでみましょう。
「第八十一話 信じる」 太郎を屠る明 目つきヤバい
すごく強くなってました。あと襟足もだいぶ伸びてました。
いつしか冬が訪れ、息も白くなり、年の瀬。
2004年4/5号
今年一年ありがとうございました。みなさんよいお年を。
暮れの彼岸島はどんな様子なんでしょうか。
「第四十八話 脱出」 ゆく邪鬼〈オニ〉くる邪鬼〈オニ〉
平常運転でした。
以上、一年通して見てみると、
「吸血鬼には盆も正月もない」ことがよく分かります。
過酷な環境で戦いつづける明たちを思うと胸が痛くます。
一方で目次を読めば、松本先生の情緒あふれるコメントがいっぱい。
『NHK ラジオ深夜便』のお便りかと思うくらい、ほっこりしてしまうのでした。
さて結局、松本先生が如何に『彼岸島』を作りえたのか、その核心は今週も分からず…。
次週も『彼岸島』目次コメントの真実に迫ります。
つづく