映画『ちはやふる ―結び―』公開記念 広瀬すずSPインタビュー

「似ていると思うのは詩暢ちゃん。
私も譲れないものは、何が何でも掴みたいから」

――広瀬すずが語る、愛しい『ちはやふる』の世界

 

雑誌『BE・LOVE』で現在も好評連載中の、競技かるたと恋と青春の物語――『ちはやふる』(作・末次由紀)。その映画化第3作目で完結作『ちはやふる ―結び―』が、来たる3月17日(土)に公開初日を迎える。今回は、主人公・綾瀬千早役の広瀬すずさんに、公開を控える主演作に懸ける想いを伺った。

 

――まず、『ちはやふる』で広瀬さんがお好きなシーンについて教えてください。

 

広瀬:そうですね、何が好きかなぁ…何が楽しかったかなぁ…瑞沢(高校かるた部同学年)の5人のシーンは全部面白くって、やりとりが楽しかったです。「上の句・下の句」とリンクするようなアドリブを入れたり、漫才コンビみたいなことやったり…もう、演じていて楽しくて楽しくて。

 


©末次由紀/講談社
↑かるたに猪突猛進!な主人公、千早が(キャプテンとして)率いる瑞沢高校かるた部。『結び』では3年生となる一同だが、1年時の部設立からすべては始まった。

 

 

広瀬:「結び」で、とある大会の途中、「上の句・下の句」でのこれまでの出来事を思い出させて胸がギュッとなるような、机くんのシーンがあったんです。本番を撮る前日の夜、「段取りをしましょう」と、リハーサルをしたんですけど…その時、森永(悠希)くんが演じる姿を見たら、私もう涙が止まらなくなっちゃって。森永くんが、「なんですずが泣くんだよ?」って言って(笑)。

 

 

 

――どうして泣けちゃったんでしょうか?

 

広瀬:『ちはやふる』のキャラクターは、みんな数年間、それぞれが誰よりも…他のチームの誰よりも絶対頑張って努力しているのに、やっぱり報われない瞬間もあるんですよね。それって、悔しいじゃないですか。それで私も、人のことなのに自分のことのように悔しくなって、…泣きました。

 

――“悔しさ”は『ちはやふる』の中でも、たくさん描かれる感情のひとつですよね。

 

広瀬:すごい描かれる。完全燃焼できたとしても、自分の力が追い付かなかったりだとか、力不足なことはあって…そういうことって私も今、日常的にすごく感じている時間が多いんです。“自分は100%の力を出していて、でも届かない”っていうのは、やっぱり悔しくて…。机くんや、自分以外の人のことでも、「なんでだよー」と思って、本当に涙が止まらなくなっちゃいました。

 

©末次由紀/講談社
↑千早や太一など非凡な仲間に囲まれながら、それでも“負けないために”、そして“仲間のために”出来ることを探してきた机くん。かるたに懸けてきたひたむきな日々を思わせる1話。

 

――机くんに感情移入してしまったとお話されましたが、広瀬さんが『ちはやふる』のキャラクターで、自分に近いなあと思うのは誰ですか?

 

広瀬:性格が似ていると思うのは、詩暢ちゃん。千早みたいに真っ直ぐに良い子ではないから。…きっと「本当にこれだけは」って譲れないものについては、時には何かを踏み台にしてでも上がって行きたいって願っちゃうタイプだと思うんです。まだ自分ではその瞬間がわからないんですけど、絶対掴みたいものがあったら私も譲れないと思うし…。千早もそうだと思うんですけど、千早の場合は、物事を良くしながら掴むタイプだと思うんです。でもたぶん詩暢ちゃんの場合は、例えば誰かの力を借りるというよりは、自分で戦って何がなんでも…みたいな。私はケチなほうだから、“何がなんでも”って思っちゃう方に近いと思います。懸ける気持ちは千早とおんなじなんだけど、掴みとり方が違う気がしています。

 

――千早と詩暢は、かるたの強さは近くても、タイプは大きく異なる二人ですよね。

 

広瀬:原作ファンのみなさんにもきっと分かっていただけると思うんですが、千早と詩暢ちゃんは二人とも強いんだけど、強さの種類が違うんですよね。あと、詩暢ちゃんが仲いいライバルとして認識している新について、「あ、団体戦やるんだ、ふ〜ん」って思うシーンがありますが、私もきっと同じように、「勝手にやってれば」とかって少し引いて思っちゃうタイプかもしれないので…詩暢ちゃんかなあ。

 

――『ちはやふる』でかるたに挑戦されたように、演じるために“特訓”が必要な作品にこれまでいくつか参加されてきたと思います。いっぱいお稽古を積んで臨む作品って、他の作品と違いはありますか?

 

広瀬:練習ものには情が入りますし、情が入ったまま現場に入るとまた、どんどん、どんどん情があふれてくるんです。苦戦してもやりきれたら、終わった時の達成感ってすごいじゃないですか。『ちはやふる』で一緒にがんばった人たちとは、悔しさも嬉しさも…おんなじ気持ちを全部共有しているから、その絆って一生ものだと思っています。

 

――それでは最後にひとこと、本記事をお読みの方に向けて一言お願いいたします。

 

広瀬:10代最後の青春映画が、公開だと『ちはやふる』になるんですが…、高校生のうちに現役の高校生の役ができたのは、私には本当に大きかったと思います。だから、きれいな気持ちです。

 

――ありがとうございました。

 

…自身が演じた千早のライバル役・若宮詩暢により深く共感すると語り、譲れないものへの想いの強さを示してくれた広瀬すず。映画『ちはやふる』で培った経験、歳の近い共演者たちとの絆、そして“悔しさ”を糧に、10代を駆け抜けて新しいステージへ登っていく。漫画の中で詩暢や千早が放つのと同じひたむきな輝きを、彼女はこれからもきっと見せてくれるだろう。

 

 

(トップ写真…撮影/Takeo Dec.、スタイリスト/三浦真紀子、ヘアメイク/牧田健史
本文写真…撮影/神谷美寛、ヘアメイク/牧田健史、スタイリスト/梶原浩敬(Stie-lo))