『化け猫あんずちゃん』がカンヌ国際映画祭「監督週間」に選出! 主演の森山未來さんインタビュー

7月19日公開の映画『化け猫あんずちゃん』(原作:いましろたかし)が、第77回カンヌ国際映画祭「監督週間」に選出! 本編は実際に役者さんが演じた映像をもとにアニメーションに描き起こす「ロトスコープ」という手法で制作されており、主人公のあんずちゃんは森山未來さんが声と動きを演じました。ということで、モーニング編集部は『あんずちゃん』の大ブレイクを予感し、いち早く動かねばとお話を伺いました。

7月19日公開の映画『化け猫あんずちゃん』(原作:いましろたかし)が、第77回カンヌ国際映画祭「監督週間」に選出! 本編は実際に役者さんが演じた映像をもとにアニメーションに描き起こす「ロトスコープ」という手法で制作されており、主人公のあんずちゃんは森山未來さんが声と動きを演じました。ということで、モーニング編集部は『あんずちゃん』の大ブレイクを予感し、いち早く動かねばとお話を伺いました。

 

──映画をご覧になっていかがでしたか?

森山: キャラクターのほぼすべての声と動き、そしてSE(効果音)や環境音を、できる限り実写撮影時の生の音を使っていて、動きにおいてもリファレンス(参考)になるものが実写ですから、それぞれの役者さんの動きのクセなどを活かしたアニメーションになっていて、生々しさが他の作品とは違う、なんだか不思議なものを観ている感覚がしました。

 

──さりげない場面ですが、最後の二人乗りのシーンなど、印象的でリアルに感じましたね。

森山: 普通に作画していたら、そういう走り方とかジェスチャーにはならないだろうというところを、むしろそういうクセっぽいところをピックアップしているだろうなという感じもありました。全部そのように徹底してやってらっしゃるのかもしれないですが、だからこそ面白かったですね。そしてなんですかね、この物語は(笑)。いましろ(たかし)さんが原作コミックで描いた、朴訥としたあんずちゃんの世界観はあるんですけど、そこから映画では、特に後半は物語の展開として「乗せて」いますよね。それでも、いわゆるカタルシスという、実写にもアニメにもある「そこまで持っていかないといけないわかりやすいミッション」とは、違うところにベクトルを向けている。そこが僕にはとても心地よかったですね。

 

──森山さんがあんずちゃんを演じる上で心掛けたことは?

森山: 実際の本編では「着ぐるみ状態」になるのはわかっていたので、どこまでディテール、身体性みたいなものを出すのかはとても意識しました。というか、それを無理に出さないように意識しましたね。もちろん、大きく動いたり声に抑揚をつけたり、色々なクセを出したほうがアニメーションになった時には面白いだろうとは想像したんですが、いましろさんの世界観で考えた時に、そういうダイナミクスが必要なのかと。今日、制作途中の映像を観て「もっとこう、大きく体を動かしたほうがよかったのかな」と思いつつも、それをしないように努めていたことを思い出しました。今はそれでよかったんだと思うようにしています。

 

──まさに、いましろ作品ゆえの「抑えをきかせる」ですね。この作品の「いましろたかし原作×久野遥子監督×山下敦弘監督」という座組みを最初に聞いた時の印象は?

森山: 山下(敦弘監督)さんとは12年前に『苦役列車』でご一緒させていただいて、その時の脚本は『あんずちゃん』同様にいまおかしんじさんでした。今回まず、そこから声がかかったということで「色」は自分なりに想像できました。いましろさんの作品を過去に山下監督が映画化していたこと(2018年『ハード・コア』)も知っていましたので、「バブルの皺寄せを食らってどん底にいる健気な人たち」みたいないましろさんの世界観と、山下さんの世界観の相性もなんとなくわかっていました。あとはそこに久野さんが加わって、アニメーションになった時にそれらの世界観にどのようなシフトチェンジが起こるのか。それは未知数でしたが、「ロトスコープ」という手法で先に実写を撮影するということで馴染みのある方々と作業ができることは想像できたので、不安はなかったですね。

森山: そういえば、いましろさんの原作も読ませていただいていたんですが、どういう経緯で『化け猫あんずちゃん』を1巻分だけ出したのか、そのあたりの事情はなんだったんですかね…。

 

──私も詳しくは知らないんですが…『化け猫あんずちゃん』は、講談社の「コミックボンボン」という児童向けコミック誌で連載されまして。

森山: え!? そうなんですか! それはある種、贅沢ですよね。あの質感の漫画が児童誌に載っているって、読者の子供たちがカルチャーショックを受けるんじゃないですか? そもそものターゲットである小学生が『あんずちゃん』を読んで、この「機微」みたいなものがどこまで伝わるんでしょうね(笑)──。

 

──最後にモーニング読者へ映画の見どころをご紹介いただけますか。

森山: あんずちゃんだけでなく、カエルちゃんや貧乏神、よっちゃんのような、ああいう「おっちゃん」って田舎によくいますよね。なんだか危ういけれど愛おしかったり、適度な距離感を保ちながら飲んだりしゃべったり。そんなうらぶれたおっちゃんたちがいましろさんのアイデアによって猫や妖怪になり、愛すべきキャラとして世界の中に置かれている、それこそがいましろさんの視点だと思いますね。映画オリジナルキャラのかりんちゃんの視点から見ても、おっちゃんたちは謎でありながら印象に残っていく存在で、いつか「あの時、あんなおっちゃんいたなあ」「訳わかんなかったけどおもしろいヤツがいたなあ」となるんじゃないかと。なかなかああいうおっちゃんたちは、現代では生きづらいですからね。今の都会には、ああいう人たちを存在させないような空気が蔓延しているので。──この映画を見て、ある懐かしさのようなものを感じてもらえたらと思います。

(2024年4月某日 東宝にて)

 

監督:久野遥子・山下敦弘
原作:いましろたかし『化け猫あんずちゃん』(講談社KCデラックス刊)
出演(声と動き):
森山未來 五藤希愛
青木崇高 市川実和子 鈴木慶一 水澤紳吾 宇野祥平
脚本:いまおかしんじ
製作:化け猫あんずちゃん製作委員会
配給:TOHO NEXT
©️いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会

 

 

 

原作コミック『化け猫あんずちゃん』は、全話コミックDAYSで読めます。

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