2018年から2021年にかけてDモーニング・モーニングで連載され累計490万部突破、TVドラマ化もされた『あせとせっけん』。作者の山田金鉄氏が、この度モーニングで新連載開始します!! 『あせとせっけん』と、新作『テレワァク与太話』について、担当編集が話を聞きました。
担当: 新連載開始おめでとうございます! 待ってました! すごい今更ですが…『あせとせっけん』の連載をまずは振り返ってみていただこうかと。
山田: 連載デビュー作だったので、当然不安はあったんですけど、最初から最後まで楽しかったです。危惧していた、話づくりがしんどい、何も思いつかない…みたいなことにもならず。アンケートが悪いからストーリーを変えようとか、無理やり連載を続けなきゃみたいなこととかもなかったので。描きたいように描けて大満足です。
担当: 「モーニング」よありがとう、ということですね。なるほど。
山田: あ、はい…(笑)。人気取れるように頑張らなきゃ、とはもちろん思っていたんですが、ダラダラやる感じも、何かを強制される感じも全くなくて。「こういうの描いたらめっちゃ面白いんじゃね⁉」と意欲的に挑戦しながらやれたので、感謝しています。
名取さんと麻子さんが掛け合うだけで、お話が作れるという状況になったのがありがたかったです。ボケもツッコミもどっちもやれて…自分が描くキャラですが、二人には足を向けて眠れません。周りのキャラも自分が本当に好きなキャラだけで固められたので(笑)、誰を描いていても楽しいみたいな状況でした。
担当: 一時期はドラキュラみたいな生活してましたけど…生活リズムは戻りました?
山田: 最初はめちゃくちゃでしたね…(笑)。週刊連載ってどうしても、原稿が上がったと思ったら次のネームをやらなきゃいけなくて、とにかく時間に追われるので。『あせとせっけん』の連載終了後、わりとすぐに違う月刊連載を始めたので(※『かさねと昴』。まんが王国など各電子書店で配信中!)、今も忙しいは忙しいんですが、睡眠時間はだいぶ長くなりましたし、自炊もしてるし。ネームしに行くカフェもいろいろバリエーションを考えられるし。人間っぽくなりました(笑)。
担当: そしてめでたくこの度、週刊連載の世界に戻ってくるわけですが。
山田: はい、そうっすね…(笑)。ただ、『あせとせっけん』を2年半週刊で連載できた! という自信はつきましたし。自分の中で、この時間でこれくらいできる、ということがわかったので。この絵描くの絶対大変だな…と予感して、それに見合った時間を確保したりとか。
自分の力量を割と正確に認識できるようになったと思います。スタッフさんも『あせとせっけん』の頃から馴染みの方々にお願いしてるので安心です。合間に描いていた同人誌等でもアシスタントをお願いしていたので、ずっとつながりを持っていただくことができました。途切れなくてよかった…。
担当: じゃあ新作について。『テレワァク与太話』は、実は『MANGA Day to Day』(※100人超の著名漫画家が集いコロナ禍の“日常”を描いたアンソロジー作品)に掲載された短編ですね。
山田: Day to dayに描いたのが2年前くらいでしょうか。その時は続きを描くつもりもなく、完全に短編のつもりで描いていました。当時はまだ、コロナがどうなるか全然わからないって状態だったんですよね。今は、そろそろ明けるのかな…? と希望を持つことができ始めている時だと思うので、今しか描けないかもな、と。テレワークも浸透して、皆ある程度普通に遊び始めて。疫病が流行った時代を題材にした落語のように“こういう男女があったそうな…”と語り継がれる、ちょっとおとぎ話感がある話を描いてみたいな、と思いました。何かを啓蒙するとか推奨するとかではなく、”与太話”としてです。
担当: ”コロナの漫画”ではないですもんね。
山田: はい。現代ってネットを使って人と交流できるし、仕事もできるし、コロナ禍でますますそういう場面って増えましたけど、でも実際人と“つながる”って、大変なことなんだよなあ…と感じていて。仕事を一緒にしていて日々密にやり取りしているけど、実は顔も知らない…みたいなことありますよね。つながれた感じがあるけど、これは本当につながっているのか? という葛藤とか、そういうものを描きたいなと。なので、物理的に近いお隣さんという存在だけど、テレワークがきっかけで知り合って、そこから”つながり”が深くなっていく…というのは面白いんじゃないかな、と思ってます。
担当: 『あせとせっけん』は「女の子が赤面しているところを描きたい!!」という山田さんのリビドーから始まった漫画でしたね。『テレワァク与太話』で描きたいものは何かありますか?
山田: 「高嶺の花」でしょうか。超ハイスペック! みたいなことではなく、手が届きそうで届かない、心を手に入れにくい、落としにくい感じの女性。難攻不落な人…を描きたいです。なので、奈津さんはそう簡単には赤面しません。すぐ赤面に頼ってしまいがちなんですが(笑)、自分にも試練を与えていかないと漫画家として成長できないので。当面のあいだ赤面を封印するとここに誓わせていただきます。
担当: そう言われると奈津さんの赤面めちゃくちゃ見たいな…。
山田: おちょくっているのかなんだかわからないようなことを、さらっと言ったりやったりしてくるお姉さんに、まんまと転がされたい…。という、誰もが持っているであろうM気質をくすぐる気持ちで描きますよ。
担当: 誰もが持っているかはわかりませんが、わかります。今回は主人公が男性、三橋さんですね。彼はどんな人ですか?
山田: コテコテのシステムエンジニアという、自分の勝手なイメージを誇張して描いてます。「物事には一つの答えがほしい!」「わからないことをそのまま放置できない!」というような性格の人です。自分がもともとシステム開発の会社にいたことがあるからか、その同僚たちのイメージが入っているかもしれません。物事の順序をさーっと説明するのがうまいなーとか。自分とは脳の作りが違うなーと。何事も逐一説明したり、物怖じせずに奈津さんにいろいろ訊いたり…下心なくそういうことができるのはすごいなーと思います。変な女たらしっぽい感じにならないのがいいですよね。
それとこれは何よりも大切なことなんですが、とにかく三白眼が描いていて楽しすぎる!!!! 『あせとせっけん』の名取さんも三白眼でしたけど、一応イケメンの範疇におさめなきゃ…とか、とは言ってもそこそこ黒目がなきゃな…とかあったけど、今回は手加減なしです。目に光が一切入らないんですよね。入れる場所がないので。絵的にはこれが超楽しいです。
あと、髪が特徴的な逆V字になっているのは若白髪である。と申し上げておきます。彼は苦労してるんでしょうがないです。白髪もそのままにしてるし、おしゃれっ気もない。仕事で手いっぱいだった人ですね。
担当: 三橋さんが三白眼すぎて、彼の小さい小さい黒目がちゃんと印刷されるのかハラハラしてます。奈津さんはどういう人ですか?
山田: さっきも言いましたが、「こういうお姉さんにおちょくられてー!」という気持ちが具現化した人です。読み切りにはなかった要素として、彼女の頬のそばかすがあるんですが…。考古学者なのでフィールドワークがあるはずで、日焼けとか気にしてらんない、という。世間に染まらず、自分の好きなものに全身全霊を捧げている感じです。ああ美しい……。アカデミックな頭のいい女性、というのもいい……。方言交じりで、京女っぽさがあるのもいいなと思ってます。京女は上品ですぐには心の内を見せてくれない、というし、人物像にも合ってるなと。落語っぽい雰囲気も出るので気に入っています。
担当: 結局いつもどおり作者のフェチがギュウギュウに詰め込まれてる。相変わらずのキャラ愛の深さで安心しました。山田さんはずっとこういうテンションで漫画を描き続けていくんですかね(笑)。
山田: キャラへの執着みたいなのは変わらないと思いますが…。自分がしてきた経験、自分が携わっていたものを題材にした漫画を描いてみたいなと思っています。『テレワァク与太話』はショートですし長期間続く連載ではないんですけど、更にこの次の長編作品の構想も、もうあるんです。本気で打ち込んでいたものから脱落してしまった…という過去が自分にあるので、「本当はこうしたかった…!」という思いを具現化したお話を描いてみようかなと。かといって暗くはならないようにしたくて、結局いつもどおり面白可笑しく描くと思うんですが。
担当: すごく楽しみです。まずは『テレワァク与太話』を満足いくように超楽しく描き切っていただいて、その後も頑張っていきましょう。
山田: はい。三橋さんがどうやって奈津さんの心をもぎ取って結婚するのか、見守っていただけたら嬉しいです!
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