広島東洋カープ・小窪哲也コーチ×なきぼくろ 5年ぶりのPL学園同級生対談!

昨年現役を引退し、広島東洋カープの1軍コーチに就任した小窪哲也コーチが『バトルスタディーズ』7巻の巻末対談以来、約5年ぶりの登場! PL学園野球部の同級生で大親友のなきぼくろが、学生時代の小窪さんの素顔から、九州アジアリーグ・火の国サラマンダーズなどを経て千葉ロッテでの現役復帰を果たした昨年の活躍のウラ話に、コテコテの関西弁で斬り込む!

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昨年現役を引退し、広島東洋カープの1軍コーチに就任した小窪哲也コーチが『バトルスタディーズ』7巻の巻末対談以来、約5年ぶりの登場! PL学園野球部の同級生で大親友のなきぼくろが、学生時代の小窪さんの素顔から、九州アジアリーグ・火の国サラマンダーズなどを経て千葉ロッテでの現役復帰を果たした昨年の活躍のウラ話に、コテコテの関西弁で斬り込む!

なきぼくろ(以下、な):小窪は……堅苦しいからいつも通りの呼び方で行かせてもらうわ! テツは作中で、花本走太のモデルにさせてもろてます。

小窪哲也さん(以下、小)俺……あんなほっぺた赤かった?

:(爆笑)いやなんかこう、テツは可愛げのあるキャラなイメージがあって。テスト用紙が半分以上よだれになるくらいずっと寝てたり。先生に……覚えてる「ジャスティス」?

:N先生な(笑)。

「7割以上よだれにせんかったら赤点にせんといたる!」とか意味わからんこと言われて(笑)。キャプテンやねんけどマスコットキャラみたいな感じやったから、アレ(ほっぺ)にしてん。

:でもなんかね、よく言われる。「小窪さんっぽい」って。

:飄々としてるんやけどたまに芯食ったこと言う花本のキャラは、テツのイメージそのまま。花本と言えば俊足やけど、テツも高校時代とにかく足速かったよな。

:プロでは武器にできるレベルちゃうから、身体デカくして足捨てたけどな。

:プロ野球は恐ろしいところやで……とにかくテツ、現役生活お疲れさま!

:ありがとう!

 

PL時代はプロを意識していなかった!

:テツはいつ頃からプロを意識し始めたん?

:大学2年で日本代表に選ばれた時かな。PLの時は2つ上の代が3人ドラフトにかかったけど(今江敏晃さん、朝井秀樹さん、桜井広大さん)、当時は一緒にプレーできんかったやん。大学日本代表は当時4年で平野さん(佳寿投手、現オリックス)とかすごい選手がたくさんいて。プロに行くレベルの人たちと一緒に野球してはじめて、プロの世界を意識するようになったな。

:高校の時はプロを考えてなかったんや?

:あんまり現実的ではなかったかもな。親父がNTTに勤めてて大阪ドーム(現・京セラドーム大阪)に野球部の応援行ったりしてたから、大学行ってNTTで社会人野球やれるように頑張ろうとか、そのくらいかな。

:青学(青山学院大学)入るのはいつ頃に決まってたん?

:3年の春。夏くらいまで言うてなかったもんな。

:考えてみたら、同部屋やったのに全く進路の話しやんかったな。

:ずっとなきぼくろの耳触ってた。

:そう。俺がテツのヒゲ触ってな(笑)。シングルベッドでイヤホンをシェアしながら、YUKIの『プリズム』聴いて。

:仲良すぎやろ(笑)。なきぼくろは大学進学考えてなかったん?

:PL入学が決まって最初の練習やから、中3の秋かな……テツのキャッチボール見てたらそんな気も失せるわ(笑)。高校入ってすぐガチョン(送球イップス)なって、とにかく俺は高校3年間で全て出し切って野球辞めるって決めてたな。高校と大学で野球の質って変わった?

:木製バットになるからな。でもPLでは、もっと使いづらい「竹バット」で練習してたから、わりとすぐに適応できた。

:手袋も使わんから、芯を外すと……。

:この世の終わりくらい手が痺れる(笑)。でも大学もプレッシャーはあったな。東都大学野球は4部までリーグがあるんやけど、とにかく2部に落ちたらアカン。でも、同じカードで2連勝すると2連休もらえたり……他の大学と比べても、結構ゆるかった記憶があるわ。

:上下関係もあまり厳しくなかった?

:結構自由やった。寮の門限も外泊届を出せば大丈夫で、そもそも3年からは門限なかったしな。全体練習は少なくて基本自主練だったから、どれだけ自分が考えて野球に打ち込めるかってことは問われた気がする。

:一番厳しいところから、一番自由なところに行ったんやな。「ビシバシ」「ゴメス」「ガチョン」(すべてPL語)は青学で通じた?

:通じるわけないやん(笑)。

:そういえば、テツは高校・大学・大学日本代表・プロ……全部キャプテンやってるな。大学やカープでもやっぱり慕われてたん?

:うーん。たぶん全部ね、ツイてただけなんよ。

:んなわけあるか(笑)。

:2年で大学日本代表に選ばれたのも、大学の監督が代表の監督になったからやと思うし……仲間に助けられることが多かったからな。今振り返るとすごいやん、って感じやけど。

:謙遜してる! 二時間くらい飲んだら「俺ほんまはすごいねん」って言い出すくせに!(笑)でもテツには「コイツについていけば大丈夫」みたいな安心感はあったな。なんぼ投票でキャプテン決めるいうても、監督からしたら選手のことが全部分かるわけではないやん。でも選手もほとんど全員がテツに投票して、監督も絶大な信頼を置いてるみたいな。多分やっぱなんかあるんでしょうね。にじみ出るものが。よだれだけじゃなくてね。

:ひどいよね!?

 

テツの赤いユニフォームが
まぶしくて。

:テツが広島入って甲子園の阪神戦を観に行った時、目の前でテツがレフトの選手とキャッチボールしててん。

:前田(智徳)さんかな?

:たぶんそう。スコーンって光ったカクテルライトと、黄緑色の芝生。テツの赤いユニフォーム。あれめちゃめちゃ、俺の中で覚えてて。ちょうどグズグズで酒ばっか飲んでる時やったから、テツがグラウンドで声張ってる姿を見て……俺なにやってるんやろってスイッチ入った。そこからガチで絵描きはじめて。

:はじめて知ったわ。

:そんな話せえへんもん、飲んでる時。

:まあ確かに。でも、俺にとってもなきぼくろは自慢の同級生やで。プロよりある意味有名やんか。特に今年なんかカープ辞めて一時期は学生野球に混じって練習してたんだけど、二十歳くらいの子たちと『バトルスタディーズ』の話題で盛り上がったり。独立リーグで熊本行っても、千葉ロッテに入ってもその話になって。

:嬉しいなあ、そんなん。俺もテツが千葉ロッテに復帰した時、現役にこだわる姿にまた力もらえたで。

:本音を言うと……実は現役にこだわりはあまりなかってん。

:えっ、そうなん?

:カープからは有難いことにコーチの打診をもらってたんやけど、俺はカープのことしか知らんから。コーチとして何を教えるか? って考えた時に、今すぐにやる自信がなかった。もちろん身体が元気なうちに思いっきり野球やっておきたいしな……ってずっとモヤモヤしてて。だからNPBに復帰できる保証なんてなかったけど、1年頑張ってみようって。

 

「悪くなった時に人間の本性が出る」
新井貴浩さんから授かった人生訓。

:この1年間はやっぱりしんどかった?

:もちろん、しんどいよ。でも同時に、プロ野球選手ってやっぱりすごいんだなって再確認できた。

:それは若い選手たちを見て?

:そう。アマチュアや独立リーグで野球をプレーして、みんなNPBを目指して人生懸けてて、なかなか入れない子がたくさんいる。やっぱりNPBの選手はなにか強みを持って入ってきてるから。その景色を見ないままコーチをしていたら、きっと「こんなこともできひんのか」とか思ってたかもしれない。若い子たちにちゃんとリスペクトを持ちながら、ちゃんとできなかったら自分のせいだ、みたいな。すごい考え方は変わった感じはするよ。

:コーチとして成長するきっかけにもなったんやな。

:でもホンマ、改めて人に伝えることって難しいなと思った。

:テツにとって理想のコーチ像はあるん?

:どうなんやろね。助けてもらったコーチはたくさんおるけど……やっぱり選手に刺さる言葉をかけてあげたいよね。カープで二軍に落ちた時、当時現役だった新井貴浩さんに「悪くなった時に人間の本性が出る」「いい時なんて誰も見てないよ」って言われて。プロから一度アマチュアで野球をして、弱ってる時でもその言葉はずっと励みになってた。

:ズシッと来るな。

:新井さんって常に一生懸命で。むしろ一軍のときより全力なんやないかなって思うくらい。後輩のこともすごく見てくれて。俺も指導者として、そういう刺さる言葉をかけられるコーチになっていきたいな。

 

テツは最後まで
俺らのキャプテンやった。

:ロッテに入って、ホームラン打ったやん。ホンマ震えたで。

:子どもも物心がついてきて、お父さんのカッコいいとこ見せたかったからな。結果が出てホンマよかったわ。

:万感の思いやろなあ、どんな顔でベース回るんやろ! と思ったら一切笑わんかったな。

:ホームラン打った時はどんな気持ちでした? って色んな人に聞かれるんやけど……あの時は自信をなくしてた。

:ホームラン打っておいて!

:あの日は2三振したあとの打席で、真っ直ぐは前に飛ばへん、変化球も当たる気しない。プロの球エグいわ……って思ってた時に、ココしかない! って決めて自分のすべてをぶつけたら、たまたまホームラン。だから手応えというか、感触もなかった。試合終わって部屋に戻って「どうしよ……」って落ち込んでたわ。

:すごすぎて分からん世界やわ……。でも、ロッテに入ってしばらく二軍の成績はよかったやん?

:自分の感覚と違うねん。ロッテに獲ってもらった意味はずっと考えてて、右打ち・バント・犠牲フライ……大事な場面で求められた結果を出すことが俺の仕事やと。でも、それを十分にこなせる自信がないまま一軍に上がった感じやった。二軍でも正直、球見えてなかったしな。あとパ・リーグは遠征も多いから、移動もしんどい。神戸でホームラン打って、次の日から千葉で3連戦。どう対処するかずっと考えてたな。

:でも、あのホームラン。観てる方は痺れたわ。PLの最後の試合でテツ、エラーしたやん? あの日を思い出した。

:ああ、俺が悪送球してな(笑)。

:「あの小窪が!?」ってみんな一気に動揺して。でも、その後すぐにテツがレフトオーバーのフェン直打って、また士気がバーン上がって。ずっと俺たち同級生はテツの背中を追いかけてるわ。テツはずっと頑張ってるな、俺は何やってるんやろ……って。(PLの)同級生もやっぱり同じこと言うてたで。あのホームランを見て、テツは最後まで俺たちのキャプテンやなって思った。

 

準備した者だけが開き直れる!

:最後やからプロを目指す球児に、メッセージを送ってあげて!

準備をした者だけが開き直れます。だから、過程を大事にしてください!

:過程も家庭も大事やな。その心は?

:NPBに戻れる保証もない中で、若い選手と野球をやってこの1年で気がついた。8月1日までにNPBが獲得してくれなければ復帰できないから、その期限がずっと怖くて。だから、もしダメだったとしても納得できるように頑張ろうと思った。しんどい時こそ努力をして準備してきたから、結果が必要な時に開き直れる。そのことに気づいた2021年やったな。とにかく、行くたびに山を越えなきゃいけない。でも、その山越えたら違う景色が見れるから。

:お後がよろしいようで……。ビシビシ入ってくるな、ちょっと涙出そうやわ。いつまで経ってもテツは俺たちのスターやな。今日色々話せて、すごい勇気づけられた。

:ありがとう! 俺もさっきの話やけど、野球人はみんな『バトルスタディーズ』読んでんねん。だから、なきぼくろが同級生って言うと、どこに行っても話が盛り上がる(笑)。ホンマ誇れる同級生がいて俺も頑張ろうって思えるから、なきぼくろの存在はずっと励みや。

:今日ずっと恥ずいな(笑)。

:またコロナ落ち着いたら飲み行こうな。

:もちろん! 広島まで行くから待っててな!

ミニコラム

――プロに入って嬉しかったことは?

:「歴代のすごい先輩たちと野球ができたことですね。PLの先輩だと、立浪(和義)さん、桑田(真澄)さんと対戦できて。憧れの松坂(大輔)さんと対戦した時も……ホンマ感動しました。あとは近鉄のファンやったから、野茂英雄さんが広島の臨時コーチに来てくれたこと!」

――豪華メンバーすぎてうらやましい!!

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PLのユニフォームに身を包んだ2003年・夏の甲子園。
打者なきぼくろ、ネクストに控えるは小窪哲也さん!
文責:編集部
本取材は2021年12月「Google Meet」を利用して、リモートで行いました。

 

『バトルスタディーズ』最新31巻好評発売中!!

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