ツイッターで大反響!『連載を打ち切られた実家暮らしアラサー漫画家の親が病で倒れるとこうなる』はこうして生まれた

ある日突然、母親が急性白血病を告げられた――そんな衝撃的な体験とそれからの家族の日常を、シリアスかつコミカルに描いた『連載を打ち切られた実家暮らしアラサー漫画家の親が病で倒れるとこうなる』。ツイッターで大きな反響を呼び、本日から「コミックDAYS」で連載がスタートしました。本作の連載開始を記念して、作者・キダニエル先生にインタビュー。本作を開始するまでの経緯や漫画化にあたっての心境、漫画に込めた想いなどを語っていただきました。

f:id:comicdays_team:20190419014355j:plain

ある日突然、母親が急性白血病を告げられた――そんな衝撃的な体験とそれからの家族の日常を、シリアスかつコミカルに描いた『連載を打ち切られた実家暮らしアラサー漫画家の親が病で倒れるとこうなる』。ツイッターで大きな反響を呼び、本日から「コミックDAYS」で連載がスタートしました。本作の連載開始を記念して、作者・キダニエル先生にインタビュー。本作を開始するまでの経緯や漫画化にあたっての心境、漫画に込めた想いなどを語っていただきました。

「楽になりたい」ために始めた“備忘録”

――母親がある日急性白血病を告げられる……という衝撃的な展開が多くの読者の注目を集めました。こうした体験を漫画にしようと思ったのはなぜでしょう?

キダニエル:当時はとにかく何に対してもやる気が起きず、漫画を読むのも描くのも億劫……という状態だったんです。ただ、今自分の周りで起こっているダウナーな出来事や感情を、ラフでも良いので残しておけば「今後、何かしら役に立つこともあるかもしれない」と思って、描き始めました。

f:id:comicdays_team:20190419210329j:plain

第1話の冒頭。当時のキダニエル先生の心情が描かれている。

 

――そうして描き始めた漫画をツイッターに掲載したことで大きな注目を集めることになったわけですが、なぜツイッターに掲載する方法を選ばれたのでしょうか?

キダニエル:「誰かに聞いてもらえるだけで楽になる」という思いが大きかったからですね。ツイッターに放流すれば、いくらかの人には聞いてもらえますから……自分が楽になりたいがために始めた、という部分がありました。

――漫画ではどのようなことを表現しようと思われたのでしょう?

キダニエル:表現というより、「備忘録」ですね。人間、どんなことでも喉元を過ぎると忘れてしまいます。何事もそんなふうに適度に忘れて、数年後に笑い話にできれば良いとも思うのですが……。ただ今回のことは命に関わることなので、できるだけ記憶にとどめておいた方が良いと思ったんです。

――結果、大反響となり「コミックDAYS」での連載が決まりました。

キダニエル:反響をいただけたことについては、三十路を目前にしてぼんやりとした不安を抱えている方が自分だけではないのだな、と確認できた点が良かったです。同時に、自分の頼り甲斐のなさを再確認させられたところもありますが……。連載になったことは素直にありがたく、嬉しいですね。

f:id:comicdays_team:20190419210433j:plain

母親が急性白血病を告げられる病院のシーン。

 

――第1話では、病院で白血病を告げられた直後、キダニエル先生自身も吐き気や手のしびれなどの症状が起きる姿が描かれています。白血病が分かったときの心境は漫画で描かれた通りのものだったのでしょうか?

キダニエル:そうですね、当時の心境は第1話目で描いた通りです。人間、ショックな出来事が起こると、本当に吐き気やめまいが起こるんだ、と驚きました。今までぼんやり生きてきた私にとって初めての感覚でした。

f:id:comicdays_team:20190419210531j:plain

母親が急性白血病を告げられた直後の状態を表現したシーン。手のしびれや吐き気などが起こった。

 

大切なのは「俯瞰で見て、ドライになりすぎない」こと

――実際に起こった出来事を描写する“体験漫画”という形態で、スケジュールの立て方も通常とは異なると思いますが、どのようなペースで描かれているのでしょうか。

キダニエル:とてもマイペースに描いています。そのため、ページ数も回によってバラバラなんです。ノンフィクションですから、良くも悪くも、以前までの作品と比べるとネームの相談はあまりしなくなりましたね。ただ、読みやすさだけは心がけていきたいと思っています。

――内容はシリアスですが、どこかコミカルな印象も受けます。作品全体のトーンで、特に気をつけていることなどは?

キダニエル:間違いなく読んで疲れる内容なので、とにかく、できるだけ“内容以外”は読者を疲れさせないようにしようと気をつけています。自分でも読み返すと疲れるぐらいなので……。また、変則的なコマ割りは避けて、吹き出しの位置や順番は気をつけるようにしていますね。

 

――あまり暗くならずに読めるのが印象的です。

キダニエル:コミカルな部分についてはお褒めいただき嬉しいのですが、読者に対する気遣い……というわけでは実はないんです。リアルの出来事を自分なりに簡潔にまとめて出力していることが結果的にそのような印象につながっているのではないでしょうか。当時も四六時中沈んでいたわけではないので、何を見て和んで笑っていたかを思い出して描いています。

f:id:comicdays_team:20190419210611j:plain

父親の驚き方など、シリアスな中にどこかコミカルさを感じさせる表現も。

 

――キャラはシンプルな造形ですが、表情が豊かですよね。このデザインに決めた理由は?

キダニエル:楽をしたくて、自然とそうなりました。実はこの漫画用にデザインしたわけでなくて、昔から使っている著者近影の自画像をベースにしているのですが、結果的には良かったと思いますね。もっと写実寄りにしていたら、憂鬱すぎて自分で読み返すことすら嫌になっていた気がします。

――タイトルも長くて独特ですよね。

キダニエル:「分かりやすさ」と「自戒」の意味で、このタイトルに決まりました。

――制作にあたって、特に意識していることは?

キダニエル:自分の中のウェットでセンチメンタルな気持ちを、常に俯瞰で見て、コントロールすることと、なおかつドライになりすぎないことですね。

――では、描くうえで苦労していることはなんでしょう?

キダニエル:「思い出したくないなぁ、描きたくないなぁ」と思う日は、やはりたびたびあるんです。そういう日は無理して描くことはしません。ただ、そうすると他の日にしわ寄せがいってしまうんですよね。心を切り替えるための効果的なスイッチがあれば良いのですが……。

悲しいことに「慣れ」はない

――漫画にする中で分かったことや気づいたことはありますか?

キダニエル:苦しいことや悲しいことに「慣れ」はないんだなと気づきました。慣れたらそれはきっと病んでいる証拠ですし、描くことをやめていると思います。慣れないからこそ、スルーすることができずに感情が蓄積されて、作品にしようという気持ちになるのではないでしょうか。

――1話から父親、母親が登場し、以降も家族間での話を中心に進んでいきます。漫画にすることで、家族間での関係性など変化はありましたか?

キダニエル:家族間のやりとりは、良い意味で変わったと思います。こんなにLINEが活躍することになるとは思いませんでしたね。それに、「話せる人と話せるときに話しておこう」という気持ちが強くなったと思います。些細なことでもありがたさを感じられるようになりました。

――家族といえば、第2話ではイケメン感のある弟のゲンさんが登場します。漫画の中で、ゲンさんの明るさはどこかホッとさせられますが、実際のゲンさんも漫画通りの人柄ですか?

キダニエル:私から見た彼は、あんな感じですね。イケメンというか、異常にナルシストなんです(笑)。でもナルシストであることって、何に対しても自信家ということなので、絶対に人生を豊かにすると思うんですよ。私もあんな風になりたいと思うときもありますね。

f:id:comicdays_team:20190419210212j:plain

第2話では「生粋の陽の者」の弟・ゲンさんが登場。

 

――漫画を発表してから、親戚など周囲の反響は?

キダニエル:こんなに親戚中に自分の漫画を読まれたのは初めてで、評判も悪くありません。その分、今作以前のひとりよがりさを反省しているところです。でも、「そのひとりよがりさこそ漫画だろ!」という気持ちもあるので、難しいですね。ただ、日頃から母に「お母さんに分からんもん描いてもきっと売れへんよ」と言われていたので、それもまた胸に留めておかねばな、と思っています。

――最後に、読者へメッセージをお願いします。

キダニエル:日記で備忘録ですので、楽しんでもらおうと画策したものではないのですが、この世のどこかの誰かに対して、少しでも癒しや助けになるのであればうれしいですね。あと、ツイッターから「コミックDAYS」に場を移すにあたって、ささやかですが描き下ろしを追加していますので、そのあたりにも注目していただけたらと思います。

 

 

毎週木曜更新!第1話はこちら↓↓

comic-days.com