『バトルスタディーズ』47巻発売記念! 今回は打って変わって…メジャーリーグ観戦記 in トロント!

白熱したMLBワールドシリーズ2025。そのおよそ3ヵ月前…なきぼくろはトロントにいた。そう、ロサンゼルス・ドジャースと最終戦までコミッショナーズ・トロフィーを奪い合った、トロント・ブルージェイズの試合を観戦しに行っていたのだ。今回は、メジャーリーグ観戦記と題して、なぜこのタイミングでMLBにハマったのか、「楽しむ」とはどういうことなのか。『バトルスタディーズ』に通ずるなきぼくろの原風景を少し覗き見れたらと思う

白熱したMLBワールドシリーズ2025。そのおよそ3ヵ月前…なきぼくろはトロントにいた。そう、ロサンゼルス・ドジャースと最終戦までコミッショナーズ・トロフィーを奪い合った、トロント・ブルージェイズの試合を観戦しに行っていたのだ。今回は、メジャーリーグ観戦記と題して、なぜこのタイミングでMLBにハマったのか、「楽しむ」とはどういうことなのか。『バトルスタディーズ』に通ずるなきぼくろの原風景を少し覗き見れたらと思う。

 

 

初MLB観戦で、大興奮&新発見!

 

──ワールドシリーズ、激アツですね!

なきぼくろ(以下、な): ホンマやな! 山本(由伸)投手の完投もすごかったし!(インタビュー時は山本投手が完投した試合の翌日)

──打ち合わせでも、よくMLBの話になりますが、今回実際に現地で観戦してみていかがでしたか?

な: 俺が観に行った試合が、1位ブルージェイズ対2位ヤンキースの首位攻防戦。今後のレギュラーシーズンの行く末を左右する大事な試合やから、球場もどんちゃん騒ぎ! 自発的に「野球が観たい!」と思って球場に行ったのが初めてやったから、いろんなことが新鮮やった。こんなに楽しいんやって(笑)。

──初めてなんですか!

な: 試合開始前から球場に行ったんやけど、選手がプリントされたフラッグがたくさん立ってたり、現地の人に「日本から来たの? ブルージェイズにはムネリン(川﨑宗則)がいたね!」って話しかけられたりして、野球観戦ってこんな感じでみんなワクワクするんや! って思ってん。初体験やから(笑)。

──意外です!

な: ロジャース・センターって、外野席の目の前にブルペンがあんねんけど、試合前に練習してるブルペンキャッチャーのサインボールもらったりして、息子も大興奮やった。ホームランボールもバンバン飛んできて、あんなに夢中でボールを追いかけたのいつぶりやろ。ビシェット選手のホームランが目の前に飛んできて、もうちょっとで捕れてん!

──大満喫してますね!

な: ゲレーロJr.選手が本当に愛されてて、ちょっと転んだりするとスタジアム中が笑いで包まれる。一方で、ジャッジ選手が登場すると大ブーイング。この文化も俺は素敵やなって思った。

──ブーイングが起こるんですか?

な: MLBのブーイングって、基本的にはネガティブな意味じゃない。むしろそれが敵チームからも愛されてるってこと。ブーイングしてる観客も「ジャッジやー!」って興奮してた。俺も一緒にブーイングしたし(笑)。

──日本にはない文化かもしれませんね。

な: 文化の違いで、もう一ついいなって思ったことは、日本やったら危ないから禁止って言われそうやけど、球場の前で子供たちが普通にキャッチボールしてること。家族でボブルヘッドが貰える列に並んでたんやけど、息子たちが「交ざりたい!」って言って一瞬で仲良くなってん。

※その時に貰ったボブルヘッド

──素敵な光景ですね!

な: 言葉とかは通じないけど、ボールを投げるだけで仲良くなれる世界がここにはあるんやって、素敵すぎるな。

 

 

子供の頃から実は身近だったMLB、しかし野球は好きになれなかった

 

──なきぼくろさんがMLBを好きになったきっかけはなんだったのでしょうか?

な: 『メジャーリーグ2』っていう映画を観た時に、子供ながらにプレースタイルが豪快な感じとか、キャラが濃い感じがすごいおもろかった。映画やからっていうのはあるけど、漠然とMLBってこんな感じなんやって。そんな中、野茂(英雄)さんがドジャースに入団してん。

──誰もが知っているメジャーリーガーですね!

な: 初めて買ってもらったグローブは、野茂さんがドジャース時代にバッテリーを組んでいた、マイク・ピアッツァ選手モデル。ニュースでもMLBが取り上げられるようになって、その時に観たマイク・ピアッツァ選手のキャッチングがめちゃめちゃかっこよかった。今みたいにフレーミングとかも気にしてなかったし、乱闘もタックルもあって、そういう自由さに惹かれたんやと思う。

──当時のMLBは、THE力対力! みたいな印象は僕にもあります。

な: 今もそうやけど、少年野球ってやらされてる感覚があってんな。投げ方しかり、打ち方しかり、戦い方しかり、正しいとされる型にはめ込む感じ。それが正解の時もあるけど、俺は息苦しかってん。でもMLBで自由に楽しそうに野球をしてる選手の姿を観て、俺も同じ野球をやってるはずなのに、違うスポーツを観てる感じになってな。だからずっと、俺は野球を好きになれなかった。

──それでもPL学園に行こうと思ったんですか?

な: 1998年のPL対横浜戦を観た時に、選手が自発的に野球をしてるように見えた。MLBを観てる時と同じ感覚になってん。延長17回まで試合して、負けてるPLが笑いながらプレーしてたり、勝ってる松坂(大輔)さんがすごい怒ってるように見えたり、それが野球を「楽しんでる」ように見えたのがきっかけで、PLに行きたいって思ってん。ジョージ(藁丈二)と重なる部分はあるな、「ここおもろそう!」みたいな。

──なきぼくろさんは、どんなことに対しても「楽しそうな匂い」に惹かれているんですね。

な: 強さ以外で、楽しそうに野球をする先輩たちの姿が、俺の中に響いたんやと思う。

 

 

再熱MLB!

 

──昔からMLBが好きとのことでしたが、ここ最近のハマり具合は尋常じゃないですよね。

な: 息子が野球を始めたり、大谷(翔平)選手がドジャースに移籍することが決まったり、1試合観始めたら完全にハマってしまって…。『バトルスタディーズ』でも「楽しむ」ってことをテーマの一つとして描いているから、取材も含めてドジャース戦は全部観た。突然やけど、ドジャースの名前の由来って知ってる?

──知らないです! 由来があるんですか?

な: もともとドジャースはブルックリンで始まった球団で、子供たちがストリートで野球をしてる時に、路面電車が通るから、「電車きたぞー! 避けろー!」って言ってからドジャースって名前やねん。「dodge=避ける」って言葉からきてんねんな。

──いい話ですね!

な: 金満球団とか悪の帝国とか言われてるけど、いろんな文化や人を取り入れる姿勢が、俺はすごい好き。

──なきぼくろさんがMLBにハマる要因には、その多様性みたいなものが大きいのかもしれませんね。

な: プレーにもそういう部分が出てて、全員「俺はできる!」って思ってる。ファインプレーしたら全力で喜ぶし、三振したらバット叩きつけるし、球審のジャッジに不服なら抗議して退場になるし(笑)。そういう感情剝き出しの感じがすごい好きやし、それをみんな違った形で持ってるのが面白い。大谷選手が最初の打席に立つ前に、相手チームの監督に必ず挨拶することとか、日本の野球のいいところもだんだん浸透していって、全世界の良い文化が混じり合っている。球場全体で見ても、毎日違ったイベントをしたり、ビジョンに不倫してるカップル映し出したり(笑)、エンタメとしてもすごく面白い。

──いわゆるボールパーク的な感じですね。

な: 野球をする場所がなくても、自分たちで自発的に野球をすることが由来になってるドジャースって、やっぱりいいよね。

 

 

MLB版第2次ジャポニズム?

 

な: MLBを観ていると、日本の野球がすごい認められてるんやなって思う。世界的に、第2次ジャポニズムが話題になってるけど、野球でもそれは起きてると思う。

──野球の第2次ジャポニズムですか?

な: 礼儀とか、精神統一の仕方とか。自分を統制する精神力って、集団生活をするために必要なことで、日本で野球をやってきていれば自然と叩き込まれてしまう。それが良いか悪いかは置いておいて、おそらく海外では今それが必要とされてる。

──感情を剝き出すMLBの良い部分と、自分を落ち着かせられる日本の良い部分が良い感じで溶け合っているんですかね。

な: パドレスのマニー・マチャド選手はダルビッシュ(有)投手のことをすごい尊敬してて、自分の精神を統一させるために彼は何をしてるのか、ブルペンにまで見に来るほどなんやて。ドジャースの選手たちも同じことを言っていて、大谷選手、山本投手、佐々木(朗希)投手も、浮き沈みなく目の前のことを着々と進めていく。3人しかいない日本人が3人とも同じようなことができるってことには絶対理由があるはずやって。

──あくまで一例として…デッドボールを当てられても多方面に「大丈夫だよ」って伝える大谷選手を見ていると、今までMLBになかった新しい雰囲気が生まれているんだなって思いますね。

な: やるべきことを、当たり前にできる繊細さ。バントやピックオフプレーが日本はずば抜けて上手い。だからこそ一発勝負になったら日本は強いんやと思う。一方MLBは、野球の本質をしっかり摑んでいるなと思っていて、俺が教わった野球は、「しっかり捕ってしっかり投げる」こと。

──僕もそう教わりました! それが大事なんだと。

な: せやねん。それは確かに大事やし、MLBも「しっかり捕ってしっかり投げる」ことは徹底してんねんけど、一番大事なことは「アウトを取る」こと。どんな形でもいいから、アウトを取ることが野球の世界では正解で、MLBでは、不利な体勢からでも送球して、ボールが逸れてアウトすら取れない…みたいな光景をよく目にする。でもそれはアウトを取りにいって生じたミスやから、全然OKやねん。

──日本ではそれをやってミスをしたら怒られてしまうし、萎縮してしまいますよね。プロ野球にも果敢なプレーをする選手はもちろんいますが、メジャーリーガーは全員がその姿勢を持っているように思います。

な: 今ではMLBもAIなどの導入で、全てがデータで管理されている。そうすると、みんな同じ打ち方になる傾向があるんやて。あれだけ「個」が強かったMLBがやで。イチローさんも「見て考える野球」が衰退してるって嘆いていらっしゃって、その気持ちはすごくわかる。

──「勝つため」に、AIは想像以上の力を貸してくれると思いますが、果たしてそれが「楽しい」のか…。これは難しい問題ですね。

な: 『バトルスタディーズ』もいよいよ終盤! だからこそ、そのアンチテーゼとして、もっと「楽しむ」ってことを強調していきたいな!

──MLBには「楽しむ」ことが詰まっているんですね!

な: MLBを観ても観なくても、俺の気持ちは変わらへん。大事なのは「楽しむ」こと! 次回作の取材も楽しいしな!

──お! そのことに触れますか…!

な: いや! 頑張って連載勝ち取るから、その時まで楽しみにしてて!

──僕もそのために全力でお力添えさせてください! 今回は打って変わってのロングインタビューをありがとうございました!

な: 楽しんでやっていこう! こちらこそありがとう! 

 

文責:編集部

※本インタビューは2025年10月に行いました。

 

 

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