『バトルスタディーズ』41巻発売記念、なきぼくろ鼎談(前編)山田祐輝×後路貴博×なきぼくろ フィクションだけどフィクションじゃない。『バトルスタディーズ』はリアルスタディーズ!

なきぼくろの一年後輩、2004年大阪大会初の決勝引き分け再試合を勝ち抜き、甲子園に出場したキャプテンと副キャプテンコンビ。その強さとは…? そのメンタルは…? なきぼくろの野球への姿勢は、後輩の目にどう映っていたのか…。

 

麻薬カルテル王・山田祐輝(左)さんと見た目はなにわのドン・後路貴博(右)となきぼくろ

山田さんの要素が入ったジョージ。

後路さんの要素が入った寿。

なきぼくろの一年後輩、2004年大阪大会初の決勝引き分け再試合を勝ち抜き、甲子園に出場したキャプテンと副キャプテンコンビ。その強さとは…? そのメンタルは…? なきぼくろの野球への姿勢は、後輩の目にどう映っていたのか…。

 

〜〜〜あの時代に、時を戻そう〜〜〜

 

後路(以下、後): 失礼します! 一年、後路入ります!

山田(以下、山): こんにちは。ご無沙汰しています。

なきぼくろ(以下、な): おお、2人とも久しぶりやな!

後: 結婚を報告しに東京でお会いして以来ですから、11年ぶりです。

山: 僕は東京でちょこちょこ飲ませていただきましたが、それもコロナ前でしたからね。

な: 二人は中学からチームが一緒で、えらいやんちゃやった。俺なんか距離も近かったし、ナメられてたからな(笑)。

山&後: いや、それはないです。出川さん(なきぼくろ)、優しいからですよ。

な: そんなことないやろ。現役の時からこんな感じやったと思うけど。

後: 出川さんは付き人にめちゃめちゃ優しかったですからね。同級生の宇都宮がやっていたんですけど、うらやましかったですよ。

な: 宇都宮は可愛かったからね。付き人という感覚もなかったし大好きやったわ。この二人もええ根性しとったよ。後路は“THE・キャッチャー”ともいうべきアツくて純粋な男。山田は、俺は南米の麻薬カルテルの映画を観ると、いっつも思い出すんよ。ああいう、ラフでありながら人格もあって、ちょっと悪いニオイも漂わせる空気が山田みたいやなって。

山: 麻薬カルテル……出川さんそんなふうに僕のことを見ていたんですね。

な: そんな空気があったよ。一年生が入った瞬間に猿山みたいに暗黙の人の取り合いが始まるんやけど、こいつはキャプテンになるやろなって感じた一人や。

後: キャプテン投票では満票でしたからね。祐輝は絶対やりたくないって僕に言ってました。僕が副キャプテンだったんですけど、この天然なところを支える副キャプテンというバランスがよかったと思います。

な: この二人は全国準優勝した忠岡ボーイズのスーパースターで、目玉の選手やったからね。山田は入ってきた時、腕が長くてしなやかで、見たことない柔らかい守備やっとった。めちゃくちゃ上手くて完全に異質やったな。ジャパンにも選ばれとったし、えらい噂になっとった。ただ、入学前に練習に来た時なんて、もうやんちゃまるだしやったけどな(笑)。

後: ナメてましたよね……。僕ら本当に仲が良かったんで、明日からPLで練習だって日に「ちょっと緊張してきたな」言うて、筋肉痛でもないのに全身に湿布貼って、ふざけるんですよ。髪の毛も茶髪でしたし。

な: バレてたで。PLに入ってくるのはやんちゃな中学生ばっかりやったからな。みんな爆笑しとったけど、可愛い中学生来たなって感じやったわ。

山: 僕はPLがこんなに厳しい学校だと知らずに入ったんですよ。忠岡ボーイズからはじめてPLに行ったので、周りも誰も教えてくれなかったんです。「厳しいのは一番強いんだからそうでしょう」ぐらいの覚悟はありましたけど、寮生活が厳しいとはまったく知りませんでした。

な: 山田は天然やからな。後路もか?

後: いや、僕はPLの寮生活がどんな感じかっていうのもわかっていました。ただ僕は日本一の高校でやりたいと思っていましたから。祐輝はなんも考えてなくて「近所のおっちゃんが言ったから」って別の高校に決まっていたんです。だから「いやいや祐輝、一緒に行こうや」って誘ったら、「後路行くなら俺も行くわ」って。

な: ラウンドワン行くみたいなノリで言うなて。

後: まぁでも本当に行けるとは思わなかったですけどね。PLはカッコよかったし、延長17回も観て憧れていましたけど、この人らヤバい人なんやろうな……とは思っていました。

山: 初練習に行かせてもらった時も、皆さん優しかったんで、大丈夫やなって思ってました。ただ……入寮した初日にもう異変は感じましたけどね(笑)。お風呂で三年生と一緒になったんですよ。まだ何も教えてもらえてない状況ですけど、全員なんとなく雰囲気を察知して固まっていたら、去り際に「今年の一年は挨拶もないんかい」って聞こえたんです。

な: しょうもないわな(笑)。まぁでも、俺が覚えてんのは、山田が入部してきて数日でチャリで3人乗りしてグラウンドまで行ってたよな(笑)。

山: ありましたね。でも、あれは練習が終わって先輩たちが寮に戻られた後、僕らはチャカ堂(寮)に戻らなきゃいけない用事があって、時間短縮をしたくてチャリに乗ってバーッと行ったら先輩とかち合ってしまいまして。

な: 誰がおったん(笑)?

山: 名前は勘弁してください…。「お疲れ様です」と言ったんですよ。そしたら「おうっ」て返事してくれたんで「あ、セーフなんかな」と安堵して洗濯物をしていたら、同級生がものすごい血相で走ってきて「集合掛かった……」って。

な: 覚えとるわ。長いことやってんなー思ってたもん。「ホラ、見つけた」みたいな感じで言いたかったんやろな。俺らはいちびる勇気もない世代やったよ。それなのにちょっと、詰めてみたい……みたいなね。

山&後: いやいやいやいやいやいや。

な: 山田も後路もヤンチャ上がりやから、そんなん全然怖くなかったやろ。もう必死な顔を作って、腹の底でさっさと時間終われ、と思っていたんやないの。

山&後: いやいやいやいやいやいや!

な: 俺らは一回も自転車なんて使うたことないからね。それがおもろかった。豪快やな。肝っ玉がちゃうわと感心しよった。後路はしてへんのか?

後: いや、バレていないだけだと思います……。でもまぁ、普通に考えたらバレますよね。でもやらなきゃならない理由もあったんです。僕らの時は学校のシステムが変わった年でもありましたからね。

 

 

〜〜〜変わりゆく時代に、変わらなかった〜〜〜

 

な: そうやったな。俺らと山田・後路たちの2世代がちょうどPLのやり方が切り替わる世代やったからね。

後: はい。僕らは出川さん育ちですから(笑)。

な: 俺らの時は野球部の研志寮がなくなったけど、野球部と剣道部だけの体育コースがまだあった。山田と後路の代からは普通科になるんよな。学校側のシステムは変わっているのに野球部のシステムは変わっていなかったから、むちゃくちゃなことを言われる。授業だって普通科のほうが1時間遅いのに、野球部の準備は今まで通りやったね。

後: 授業があるから、先輩たちが先にグラウンドに行った後に僕らが行く形だったんで、「ベベ3」*1も物理的にできないんです。でもそれが逆に大変で……一年生がやるべき準備作業を、出川さんたち二年生がまた練習前にしないといけなくなるので、僕らは朝にやるしかないんですよね。4時とか5時ぐらいからグラウンドに出て準備をみんなでやっていました。

山: せっかく早朝にグラセンしたのに、雨降ってきたりしてな(笑)。物理的に無理なことがかなりありました。そもそも普通科になったので、クラスに女の子がいますからね。

な: これで「見たらアカン」なんて絶対無理やねんけどな。「仲良くないフリをしとかなアカン」みたいなのも、しんどかったやろしな。

山: 出川さんたちの代は、上級生になって本来ならば解放されるのに、僕ら一年生が遅れて来るから、その時間に練習ができなかったんですよね。

な: 「お前らに先輩とかないからな」ってコーチに言われたからな(笑)。でも今思えばよかったよ。俺はライトグラセンめっちゃ好きやったから。

山: でも、その先輩たちがグラセンしている姿を僕らは着替えながら見えるわけじゃないですか……強烈でしたよ。

な: 朝に一年生が整備してくれているのは見ればわかるから、キレイにしてくれてるわってのはあるけど、重箱の隅をつつく先輩もおるからめんどくさかったやろな。

山: 三年生の先輩たちの温度感が毎日違うじゃないですか。僕らチャカ堂で着替えながらその日の練習の温度感を確かめるんです。ちょっと笑い声が聞こえてくると、ホッとするんですけど、ピリピリしてるあの空気にはめっちゃ敏感でした。

後: 『バトルスタディーズ』でも一年生に集合掛かった時、あの「どよーん」という擬音で描かれてるじゃないですか。あれすごいですね……リアルスタディーズですよ。うわーって声が出ましたもん。やらかした後のあのピッとした空気。僕らが本当に見ていた景色を漫画で客観視して、ヘンな気持ちになりますよ(笑)。

山: たしかに。先輩たちの何気ない表情とか、多分、僕らにしかわからない暗号じゃないかと。門松のパパーンという感じも、なんて言っていいかわからないですけど、ものすごくわかります。

な: あれはファンタジーやないからな。ちなみに、ジョージは山田の要素が入っとる。ちょっとナメとるけど、賢いし、仕事もできる。後路は寿で、とにかく元気でまっすぐで純粋。関係性は全然ちゃうけどね。

 

 

〜〜〜グラウンドに出れば鬼、帰れば仏〜〜〜

 

山: でも僕は出川さんの代の先輩たちに怒られた記憶がないんですよ。

な: 二人とも受け答えがすごくいいから先輩にも可愛がられとったよな。山田は天然というかな、先輩にも「ハイハイ、わかりました!」とか返事しちゃってるのに、誰にも怒られないみたいなね。

後: 祐輝は黄金ルート、小窪(哲也)さんの系列だったってこともありますよね。寝坊して朝遅刻しても祐輝だけは怒られない。下の名前で呼ばれたら勝ちみたいな空気あるじゃないですか。祐輝は早い段階から呼ばれていたし、小窪さんに「韓国ドラマに出てくる有力者の息子みたい」って言われていました。

山: 出川さん……そんな毎回寝坊していたわけじゃないですよ。1,2回です。

な: わかっとるよ。俺、寮生長やったから、人数を数えろって言われてたからな。山田がおらんのもほんのたまに。でも怒られなかったのは、小窪のおかげやないで。仕事はできるし、人当たりはいいし、かといって、ちょっと謎の部分もあるから、タイプ的に先輩からちょっと距離取られるタイプなんや。

山: コーチから怒られる時は、僕が前に出ていたんですけどね(笑)。でも、僕は出川さんが後輩を怒っているのを見たことがないですよ。

な: 俺は(中村)圭には怒ったことがあるな。

後: 僕ちょうど見てましたけど……あれは、とても芸術的なドロップキックでした。

な: めっちゃ覚えとるわ。

後: “最終”で1周10本をやるじゃないですか。1分以内にゴールを切るなら、最後の3メートル手前ぐらいから歩いてもOKですけど、一年生がそんなことできるわけがないんです。なのに、圭が歩いていたんです。それを見つけた出川さんが、めちゃめちゃ飛んでいきました(笑)。

な: 俺、イラつかへんやん。それに圭のこともムッチャ可愛がってた。でもなんでムカついたのかは、はっきり覚えてる。あの時は1周55秒切りとかむちゃなタイムを言われとって、俺ら三年生でもタイムに入れないぐらいしんどかった。そんな中でも俺も後路も山田も入ってんだよ。それなのに一番速く走れる圭がタイム入らんかってん。しんどいのはわかるけど、可愛がっていた分見たらカチンときて、気づいたら空飛んでたわ(笑)。

後: 圭はメンバーにも入っていましたし、それなのに手を抜いてたのが逆鱗に触れてしまったんですよね。

な: 圭はめっちゃ可愛い奴で、ほかの同級生にはしないようなふざけた挨拶を俺にだけはしてくれる。そういう関係性があったんよね。それだけに余計に腹立ったんやろな。アカンことしたな。

山: 僕らから見たら、キャプテンは小窪さんですけど、出川さんはグラウンドのリーダーですよ。出川さん、本当に気合入っていましたから、キレてる時は僕ら全員すいませんでしたって感じでした。

な: いやいや、キレへんやろ。

後: 出川さんは男気のある方なんで、グラウンドでしか怒らないんですよ。寮だったり、他のところでは一切怒らない。あとは相手が誰だろうが物を言うし、細かいところで手を抜くとすごい厳しかったです。

山: なのに寮では笑かしにくるので、それを我慢するのが大変だったぐらいです。ただ、グラウンドでは誰よりも一番気合が入っていました。そういう雰囲気が出ている時はおっかなかったです。

後: グラウンドでの出川さんは厳しかったです。僕らもメンバーに入らせていただいていたんですけど、絶対に手が抜けない空気でした。

山: 僕はショートで、出川さんがライトで、ノックの前に普通はキャプテンがひと言言って守備につくんですけど、出川さんがよく言うんですよ。「これから戦争じゃ。ボール回しは戦争じゃ」って。それを聞いて、僕ら一球もミスれないって震えてましたね(笑)。

な: あれはな、俺自身に言うてたんや。俺が一番投げられへんから。

後: 出川さんと、あと松葉(大介)さんがやっぱり気合入ってましたよね。

な: たいしたプレーもできないごまめの二人やから盛り上げないと生きていけへんねん。

後: あとは唯一、祐輝にちゃんと厳しいことを言ってくれたのは、二葉(祐貴)さんぐらいでしたね。

山: 二葉さんは全員に厳しかったです。

な: 貴重やな。全員に嫌われてもいいからって、厳しいこと全員に言ってくれたもんな。なかなかできひんよ。あいつはすごい。

後: 当時の話をしていると20年前にタイムスリップしたみたいです(笑)。

な: いやでも、後路はキャッチャーで入って来て、身体も今と変わんないぐらい大きかったから、先輩たちからレギュラー奪取できるんやないかと思っとったけどな。初めての練習の時、いけると思ったやろ?

後: ……いや。上の代の人には勝てないです。僕も二葉さんには勝てなかったし、祐輝も小窪さんには勝てなかった。出川さんの代はレギュラーが全員三年生でしたからね。

な: そうやったな。でも山田も小窪を抜こうとはしたんやろ?

山: 最初はそのつもりでいってましたけど、日々の生活を一緒に過ごしているうちにどうやら違うなと感じはじめるんですね。プレー云々はもう当たり前なんですけど、マンガにもあるように、人として尊敬してしまったんです。その瞬間にもうこっちは絶対に追いつけないですよね。

な: わかるわ。この人は1年間、この戦場を潜り抜けてきたんやなって雰囲気を出すからな。引け目を感じちゃう気持ちは俺もわかる。

山: あと入部して3ヵ月で全身の肉が削ぎ落とされて爪楊枝みたいになってました。でも、やっぱり出川さんたちは気合が違いましたよ。僕ら三年生になってからも、監督に「出川たちの気合をオマエら受け継いどんのか!」とよく言われましたから。

後: 僕らが一年生で、洗濯物を畳んでいる夜中に、松葉さんが一人でバットをずっと振っていたんですよ。これぐらいやらないとレギュラーにはなれへんのかなって、そこにリスペクトが生まれてしまうんです。そういう姿を見てきたから、試合になっても僕らは心から打ってくれと願っていましたから。

な: あいつずっこいな。練習終わったら自分の局部のニオイを圭に嗅がしとったくせに。圭も「クサいです」って、バリおもろかったわ。

後: ニオイといえば、この出川さんの仕事部屋のニオイ……寮の部屋と同じですね。

な: ホンマか。寮でもお香焚いとったっけ?

後: はい。僕が木村(充成)さんのマッサージをしている時、隣のベッドだった出川さんのインセンスのニオイ、ずっと嗅いでいたんで。出川さん、宇都宮のマッサージ覚えてますか?

な: 覚えとるよ。

後: 夜中の0時とかですよ。木村さんは手で嚙むようにマッサージしてほしいという変わった方なんですけど、その最中に「なんかヘンだな」と違和感を感じて横を見ると、宇都宮が出川さんのまゆ毛を両手で逆さまに撫でている。祐輝、知らん?

山: 知らん……。

後: 出川さん、もう芸術家肌だから、そもそも背中揉むという考えがないんです。俺が一生懸命揉んでる横で、宇都宮は正座しながら「失礼します」「失礼します」って一回ずつ断りを入れながらサワサワとまゆ毛をさわっているんですよ。「後路、これがなぁ、気持ちええねん」とか言いながらお休みになられて(笑)。

な: あれは性感マッサージみたいなもんだから、他にも指の先をフェザータッチしてもらったりもあったよ。ありがとうな、言うて。小窪も俺のほくろを触りに来んねん。今のメンズマッサージの走りよな。

後: 宇都宮は本当に出川さん大好きだったから、洗濯物とかものすごい丁寧に洗っていましたよ。愛ですよね。「この洗濯物は俺んのや」みたいな空気感じましたもん。

山: 愛情があるの伝わっていました。系列って色があるんですよね。出川さんのところはめっちゃ楽しそうだった。

な: いやいや、ええように言い過ぎや。宇都宮も大変やったと思うで。俺と谷中(昭仁)とカズ(藤井主文)は朝4時に起きて練習いってたやん。宇都宮が起こしに来てくれとったし、後輩からしたら迷惑な話やろ。

後: 出川さんの悪い所なんか本当にないですよ。一度だけギター持って出川さんの部屋に行って「出川さん、一曲弾いてもいいですか?」ってやったことがあって。

山: えええ! だいぶ飛び越えてるやん。

な: 誕生日やったかなんかわからんけど、ギター持ってきて「弾かせていただきます」って満面の笑みで、めっちゃ小さい音出しながら一曲やって帰ってったで。

後: これは出川さんということもありますけど、空気を読めるかが重要なんですよ。調子には乗っても、やりすぎるとダメで、“カイシン”*2の瀬戸際を見極めなきゃいけない。

山: その空気をわかっていない奴が基本怒られますから。

な: この人は、これがイケてこれはあかんのか……みたいな、人を見る能力が無駄に上がったよな。

山: でも出川さん、当時から芸術家肌だとは思っていましたけど、高校で野球をやめてイラストの道に進むなんて思ってもいませんでした。はじめてのことじゃないですか? PLのレギュラーだったのに野球で進学しないなんて。

後: 祐輝だけやって。みんな知っとったで。出川さんは「壊れようがケガしようが、もう野球は終わりやから命がけで行く」と仰ってましたからね。僕は監督にお話しされているのを聞いてしまったんです。それで出川さんは野球をやめて芸術のほうに進まれるって。

な: 俺は一年生の時からもう辞めるつもりやったからね。二年で腰を壊した時に、この子らの代にすごい選手がおって、そいつがどんどん上手くなるの見て、これは休んどったらアカンと思って、監督に「潰れてもいいからやらせてください」って言いに行ったんだよ。

山: 結局、僕らの代は、2003年の夏に誰一人として出川さんの代からレギュラーを獲れなかった。でも、心から勝ってほしいと願っていたんです。なんでかって、出川さんたちの一試合、ワンプレーに命すら惜しまないような覚悟を間近で見てきましたから。そして、それは僕たちの代になってからも色濃く引き継がれていくんです。

【つづく】

 

 

文責:編集部

※本鼎談は2024年6月、感染対策をして取材を行いました。
※本記事は単行本『バトルスタディーズ』41巻に収録された対談記事です。

 

 

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*1:一年生は、授業の終了と同時に寮までダッシュ。下位3名に入ると恐ろしい罰ゲームが待っている。

*2:おおっぴらの意