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【インタビュー】 サンフレッチェ広島 佐々木翔[前半]



「森保さんが大事にしていること」

底抜けに明るい。それがサンフレッチェ広島でプレーする佐々木翔に抱いた第一印象だった。ただ、本人は「めちゃくちゃ人見知りですよ」と、苦笑いを浮かべる。

話していくと、ちょっとだけ、「なるほどな」と思わされる。会話の端々に本音と建前が見え隠れする。サービス精神が旺盛だからか、まずは建前を言って笑いを誘おうとして、その後に本音を覗かせるのだ。

佐々木は、森保一監督が日本代表の指揮官に就任したことで、初めてA代表に招集された。森保監督がサンフレッチェ広島を率いていたときに指導を受けたこともあり、いわゆる森保チルドレンの一人でもある。ただ、初めて日本代表に選ばれたことについて聞けば、「選ばれるとは思っていなかったので、正直、最初は驚きました」と答える。

そういった後でこう付け加えた。

「もしかしたらチャンスがあるかもな、くらいは思ったときがありましたけど、一つのクラブから大勢が選ばれることはないだろうなとも思っていたんですよね。そうなると、うちには日本代表に選ばれてもおかしくない選手がたくさんいる。だからこそ、自分が選ばれたときはびっくりしたんです。ただ、選ばれたことはうれしかったですけど、その中に入って試合に出なければ意味がない。そのうえで結果も出さなければいけないですからね」

おそらく、ここからが本心なのだろう。

「あとは、森保さんがやるサッカーにまた加われることがうれしかったですね。自分は(2016年に)ケガをしてしまって、森保さんと一緒にサッカーをする時間が失われてしまった。それだけにもう一度、森保さんと一緒にサッカーを築いていける喜びはあります」



日本代表の指揮官として再会した森保監督について尋ねると、最初は「あまり変わっていなかったですね」と答える。思わず、こちらが笑ったのを見て、佐々木は言葉を続けた。

「サンフレッチェの監督だったときもそうでしたけど、やっぱり森保さんはブレないんですよね。どんなことにも一貫性がある。それは練習内容が当時と今とで変わらないということではないですよ。チームの在り方やベースのことです。『日本代表はチームのためにプレーできる人だけが集まる場所だ』ということを話してくれて、それはサンフレッチェ時代にもよく言っていたことだなって思い出しました。個人、個人に特徴はあるし、それを発揮したいのは分かるけれど、まずは『チームのために』というのがある。それができる人を呼んでいるし、それを求めているということを聞いて、立場が変わっても、森保さんが大事にしていることは変わらないんだなって感じましたよね」

その森保監督が、広島を率いていたときの代名詞でもあった「3-4-2-1」システムを封印し、日本代表では「4-4-2」や「4-2-3-1」を採用していることについても言及した。

「3バックを採用するものだと思っていたので、最初はびっくりしましたよね」

そう言って満面の笑みを浮かべると、再び言葉を続ける。

「今シーズンのサンフレッチェでは4バックの左サイドでずっと試合に出ていますけど、森保さんには3バックとして評価してもらい、そこで起用してもらっていた。だから日本代表でも3バックを採用するから自分は呼ばれたと思っていたんです。それほど森保さんと多くは話していないですけど、後ろが4枚でも3枚でも、CBでもSBでもWBでも、どこでもプレーできるように準備しておいてほしいということは言われました」



ロッカールームで、長友に受けた衝撃

森保ジャパンにとっても、自身にとっても初陣となった9月11日のコスタリカ戦について聞けば、「国歌斉唱のときにそわそわしていたら、格好悪いのでなるべく上のほうを見るようにしていた」と、まずはリップサービスをする。そろそろ読者も、次の展開が想像できるだろうが、少しばかり目の色を変えてこう話してくれた。

「自分の内容がどうであれ、まずはチームが勝たないと。だから、結果を出さなければと思ってました」

そのコスタリカ戦は南野拓実(ザルツブルク)、堂安律(フローニンゲン)、中島翔哉(ポルティモネンセ)といった若い世代が躍動して3-0で勝利した。目に力を宿した佐々木の言葉は続く。

「若手から刺激を受けたのはもちろんですけど、それ以上に、前線の選手たちの良さを活かすために自分がどうしたらいいかということを考えながらプレーしています。もちろん、みんな、力のある選手だということは分かっている。その中で、仕掛けられる選手たちにボールを預けたとき、自分が走って上がって、そのスペースを潰してしまう必要があるのか。それともそこを使わせたほうがいいのか。そうしたことを考えながらプレーしていますね。守備の負担を僕が担うことができれば、その分、彼らは攻撃でパワーを発揮できますから」



続く10月の代表戦では長友佑都(ガラタサライ)や大迫勇也(ブレーメン)といったロシア・ワールドカップに出場したメンバーたちも選出された。彼らの振る舞いを見て、何を感じたかを聞けば、佐々木はこう教えてくれた。

「ロッカーが背番号順なので、僕の隣が長友さんだったんですけど、選手って試合前に音楽を聞いたりするじゃないですか。そのとき、長友さんはかなり大きな声で歌うんですよね(笑)。大きな声というか、普通に歌っている。そういう光景って、まずJリーグでは見ない。それって本当にすごいことだと思うんです」

楽しそうにエピソードを話してくれたが、これは決して長友への揶揄ではない。

「今の自分は周りを気にしてしまって、それはできない。でも、きっと海外でプレーしている選手たちは、そうやって自分のリズムを作ったりしているんだと思うんです。そうした行動からも自信が満ち溢れているのが分かる。日本人は空気を読む力があるとか、あまり波風を立てないようにするというのが一般的ですが、海外でプレーしている選手たちにとっては一切関係ない。自分の思っていることははっきりと言う。海外で生き抜くというのはそういうことなんだって感じたんですよね」

ただ、すべてに感化されるわけではない。

「だからといって、代表に行って感じた主張することや、リズムを作ることも、僕がサンフレッチェに戻ってきてやるとなると、それはまた違うとも思うんです。ここにはここ、僕には僕の色がある」 (前半了)



取材・文=原田大輔(SCエディトリアル)
写真=佐野美樹






後半に続きます!

佐々木翔(ささき・しょう)

1989年10月2日、神奈川県出身。サンフレッチェ広島。DF。背番号19。176cm/70kg。
神奈川大学を卒業後、2012年にヴァンフォーレ甲府に加入すると、1年目から出場機会を得て活躍。2015年にサンフレッチェ広島に加入し、クラブ3度目のJ1優勝に貢献した。2016年、2017年はケガに苦しんだが、今シーズン復活を果たすと、日本代表に初選出された。9月11日のコスタリカ戦で代表デビューを飾り、その後も森保ジャパンに名を連ねている。