ラクロス男子日本代表・佐野清×『FACE OFF!!』作者・上野海 特別対談

2022年6月4日よりコミックDAYS(講談社)で連載配信がスタートした漫画「FACE OFF!!」。日本初の男子ラクロスをテーマにしたこの漫画の今後について、作者の上野海先生に突撃取材に行った。

2022年6月4日よりコミックDAYS(講談社)で連載配信がスタートした漫画『FACE OFF!!』。日本初の男子ラクロスをテーマにしたこの漫画の今後について、作者の上野海先生に突撃取材に行った。

※本記事は「LACROSSE MAGAZINE JAPAN」で掲載された記事を再掲載しております。

<話者>

上野海・・・漫画『FACE OFF!!』作者

伊藤智華・・・(株)講談社イブニング編集部

佐野清・・・ラクロス男子日本代表

今井健司・・・日本ラクロス協会広報部部長

※上野さんは本人希望により顔を伏せております。

 

Chapter1「自分が読みたいと思って描き始めた漫画」

 

今井: 本日はどうぞよろしくお願いします。今回はよりリアルなお話をお聞きするために、当事者である日本代表の佐野選手を連れてきました。佐野選手本日はよろしくお願いします。

上野佐野 よろしくお願いします。

佐野: 単刀直入に聞きたいのですが、なぜ男子ラクロスを題材にしようと思ったのですか?

上野: 初めて男子ラクロスに出会ったとき、「あれ、これって漫画とかないのかな?」って思ったんですよね。率直に、私が読んでみたいなって。もともと学校で美術とかは得意で絵は描ける方だったんですけど、実際に描き始めてみたらとても下手で(笑)。でもこのラクロスは漫画にしたら絶対面白くなると思い、猛練習して描き続けていました。それでたまたまDAYS NEO(※)に投稿していたのを、編集部の伊藤さんに見つけてもらって今に至るという感じですね。

※DAYS NEO…漫画編集者とオンラインで出逢うことができる漫画投稿サイト。

 

今井: 伊藤さんにとって、当初、ラクロスはどういう印象でしたか?

伊藤: もともとラクロスは大学生のときに先輩方がやっていたくらいで、私にとってあまり近しい存在ではなかったんですよね。だけど、DAYS NEOに投稿頂いた『FACE OFF!!』のプロトタイプを見てこれだけ頑張って描いているのが印象的だったし、アクションシーンもかっこいいなと思いました。今ラクロスが題材になっている漫画はほとんどなくて、この何もないまっさらな状態から日本初を売りにしていきたいと思いました。

上野: 多分、大学生を主人公にしたストーリーの方が描きやすいとは思います。でも、社会人ラクロスって自由度がとても高いと思っていて、チームの移籍とかって学生ではないんですけど、去年まで味方だった人が今年対戦相手になることって社会人だと結構あるあるだと思うんです。

佐野: 確かに、私は今FALCONS(東日本クラブチーム連盟の強豪チーム)でプレーをしていますが、去年までは違うチームでプレーしていました。やっぱりチームによって特色もあるし、自分が描きたいラクロス人生を選んでいく上で、それを認め合える環境があるとは感じています。チームメイトにも家庭を支えながらラクロスをやっていたり、仕事も頑張りながらラクロスをやっていたり、本当に色々な人がいて、面白いですね。

伊藤: 家庭や仕事の都合などさまざまな理由で移籍していったりと、とても興味深いですよね。

佐野: 中には、ラクロスに熱中しやすい環境を作るため、職場を選んだりする人もいらっしゃいますからね。

上野: いろんな人たちの複雑な関係性を描けるのは、漫画としては面白いかなって思っているんです。職場を選んでまでラクロスに熱中できるって、ラクロスにどんな魅力があるんだろう?って不思議に思いますよね。

伊藤: 主人公の埋火遥人(うずみび はると)とか、ライバルの掛井大志(かけい たいし)とかも、ただただ自分がラクロスを好きでやりたいからやっているのがすごく感じられて、毎日仕事がありながらもラクロスをやっているその姿に、アツいドラマがあるんじゃないかなって思っているんです。

上野: 毎日仕事をしているのをよりリアルに見せるためキャラ紹介のところに勤務先とか書いているんですよね。

佐野: 遥人の勤務先のまりもフーズとかですよね(笑)

上野: そうです(笑) サードプレイスって言葉もありますけど、仕事や家庭以外の場所で本気でアツくなれる場所があるっていうのが素晴らしいなって思っています。去年、全日本クラブ選手権大会の決勝戦を会場で見て、FALCONSの選手が、試合に負けた後、泣いているのを見たときに「これは連載にしなきゃダメだな」って決意したんですよね。

伊藤: 泣ける場所があるっていうのがうらやましいですよね。

佐野: 考えたことなかったですけど、そう言われてみればそうかもしれないです(笑)

上野: めちゃくちゃ青春してますよ(笑)

 

 

Chapter2「「面白さ」と「正しさ」のバランス」

 

佐野: ラクロス漫画を描くときに、苦労したこととかってあるんですか?

上野: クロスも大変ですが、個人的にはグローブを描く方がたいへんですね。絵を描く方だとよくご存知かと思いますが、「手」は体のパーツの中でも描くのが難しいところで、そこにさらにゴツゴツしたグローブが加わると、動きをつけていくのがかなり難しかったです。ラクロスはとても動きのあるスポーツなので、そこを表現するのは大変ですが、その分楽しいですね。

佐野: クロスも含めてかなり細かいところまで描かれていると思うのですが、何か参考にしているのですか?

上野: 実際に実物を手に入れてそれを参考にしながら描いています。クロスの編み方とかも、ラクロスをやっている方はみなさんこだわりがあるなと思っていて、そういったところも漫画で描けたらなと思っています。

佐野: 確かにそういった細かいところが出てくると、ラクロス経験者は喜ぶんじゃないかなと思います。実際に私が読ませてもらったときも、「お、この主人公はU字のパウエル使っているんだ」ってちょっと興奮してました(笑)

上野: U字パウエル最近はあまり見ないですよね(笑) ラクロスを知っている方なら、こういった細かいところも楽しんでもらえると思うんですけど、実際ラクロスを知っている方とそうではない方ではこの漫画の見ている部分が全然違うんですね。

今井: ラクロスを知らない方からはどういった感想をいただいたんですか?

 

上野: やっぱり漫画のストーリーであったりとか、キャラクターの設定であったりとかに対しての感想が多かったです。ラクロスを知っている方からするとちょっとツッコミどころがあったり、くどかったりするかもしれないんですが、全然知らない方にとっては、あのくらいのスピードでちょうどいいみたいなんですね。

伊藤: 私はラクロスの知識がほとんどないんですが、やっぱりネームを読んでいてわからないことがたくさんあるんですよね。言葉の表現とか、他愛もない描写とかもラクロス経験者からすると自然だったのかもしれませんが、漫画の構成上あえて変更してもらった部分などもあって、「面白さ」と「正しさ」のバランスをとっていくのが難しいなと感じています。

上野: 最初はそのあたり全く気を遣わないで描いていたので、かなり修正がありました(笑)

 

 

Chapter3「それでも「何か」を探し続ける人がいる」

 

佐野: 二話目までを見させてもらって、率直に今後どうなっていくのかが楽しみなのですが、今後この漫画を通じてどうなっていってほしいと思っていますか?

上野: 元々はラクロスを知らない方にラクロスを知ってほしいという思いがあって描いていました。作中に登場する天草幸也(あまくさ ゆきなり)はラクロスをほとんどやったことがない状態で社会人ラクロスの世界に足を踏み入れることになりますが、彼と同じ目線に立って、主人公の遥人が案内してくれるラクロスそのものの面白さや社会人ラクロスの魅力を知っていってもらいたいなと思っています。

今井: 社会人プレイヤーがラクロスを通じて、どんな風になって欲しいとかありますか?

上野: そこまではまだ膨らませてはいないですね。ただ、社会人は転勤で辞めざるを得なかったりするときもあるかもしれませんが、基本的には誰かに辞めさせられることはなくて、自分でどこかで見切りをつけて辞めていかなければならないと思うんです。だから、大学卒業のタイミングでラクロスを辞める方が、タイミング的には辞めやすいんだろうなって思っています。けれど実際はそんな綺麗な世界なんかじゃなくて、学生の頃に残してきた「何か」を探し続けている社会人の方というのは、ラクロスのプレイヤー以外でもいらっしゃるのではないでしょうか?そういった方にも、その「何か」を探し続けるこの漫画のキャラクターの姿を、楽しんでほしいし、この作品を通じてこんな素晴らしい場所があるってことを多くの方に伝えていきたいですね。

そう言って先生はそばにあったクロスを見つめた。
その情熱に包まれた目はこれからのラクロス界をどう見るのか、そしてどう表現するのか。連載開始は彼女にとってのFACE OFFでしかない。
これから始まる注目の一戦から目が離せない。

 

佐野清選手は、7/8からアメリカで開催される「第11回 ワールドゲームズ」に、ラクロスSIXES(6人制)男子日本代表として出場します。アメリカ、カナダ、オーストラリアなどラクロスの強豪国が参加するこの大会、日本が善戦できるようみなさん応援してください。

詳しくは日本ラクロス協会ホームページをご覧ください。

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