『バトルスタディーズ』45・46巻2冊同時発売記念、なきぼくろ対談 若林春樹×なきぼくろ(後編) ほんまに調子乗ってたんで。野球の実力は誰が見てもピカイチ。しかしそれは大きな沼への入り口だった…。

逃げることは恥なのか。誰しもが盲目にPL焦がれることが普通だったその当時、「違和感」にぶち当たった。その違和感に従った選択が、正しかったのか、間違いだったのか。その答えの出ない問いに悩まれて20年…。

逃げることは恥なのか。誰しもが盲目にPL焦がれることが普通だったその当時、「違和感」にぶち当たった。その違和感に従った選択が、正しかったのか、間違いだったのか。その答えの出ない問いに悩まれて20年…。

 

 

続・高校野球にしか興味がないなきぼくろ、プロ野球にしか興味がない若林。

 

なきぼくろ(以下、な): 3年生になった時に初めて練習試合をしたんよな。若林と試合できるって、めちゃめちゃ嬉しかってん。最初一緒にPLに入ろうとしてたし、PLの連中も若林のこと知ってたから、みんなでいじり倒して、ボコボコにして勝ったろうと思ってた。それでPLに来なかったことを後悔させてやろうって。

若林(以下、若): 俺はPLからも逃げて、関西創価高校からも逃げて、逃げることしかしてないから、正直コンプレックスみたいになっちゃってた。それでも出川たちは、フランクに喋りかけてくれて、めちゃめちゃ嬉しかったよ。その試合では全然打てなかったけど、腫れ物がとれたみたいな感覚。

な: 1年生の時は、若林ともう一人の世代最強って言われてた二人がPLに入ってくるって話やったから、絶対に強くなるって確信があってん。結局二人ともPLには来なかったけど、そんな若林と試合できるってなったらな、もう公式戦より楽しみやねん。

若: PLに行かなかったことを本気で後悔したよ。今でも夢に見るくらいやから。PLに行ってればどんな人生になってたんやろって。

な: その話は小窪(哲也)とも話したことがある。若林がいたら楽しかったやろうけど、若林のことを思うとこないほうが正解やったんちゃうかなって思う。俺は若林が逃げたとは思ってなくて、「後悔」って言葉はキャッチーやから使い勝手いいけど「PLはおかしい」って冷静に見れたんやと思うよ。こんな厳しいのは変やって。

若: 厳しいこと以外は嫌じゃなかったからな。同い年のみんなは良い奴ばっかりやし。

な: まぁ選ぶ高校によって合う合わへんはあるからなんとも言えへんけどな(笑)。

若: PLっていう一流の野球を学べる場で指導を受けてたらって思うけど、それで潰れちゃったら意味ないもんな。あの当時はどこに行ったとしてもいずれはプロになれるって勘違いしちゃってたし。

な: 俺はほんまに高校野球…PLにしか興味がなかったから、枚方シニアでレギュラーになって、キャプテンになって、チーム強くして、目立ってPLからスカウトもらうってことしか考えてなかった。だからPLがおかしくても関係なかってん。プロに興味もないから「どうせ3年間」って気持ちやった。若林みたいに高校のその先もちゃんと見えてる人からすると、なんでPLに行きたいと思うんやろって疑問を持つのもわかる。だから若林の言う「後悔」は、PLじゃなくて、「人」の話ちゃう?

若: そうやわ。出川達と野球してたら面白かったやろなってめっちゃ思ってた。自分の意思でPL行くのやめて関西創価高校に行ったのに、「なんで俺ここで野球してんねやろ」って思っちゃったんよな。ほんまに調子乗ってたんで。

な: PLの連中とは何度か一緒に練習会にも参加してたし、シニアでの顔馴染みも多かったしな。

若: ほんまに調子乗ってたんで。

な: 何回言うねん(笑)。

 

 

大学進学、独立リーグ、そして少年野球のコーチとして

 

若: 高校卒業後は、國學院大学に進学して2年で中退。その後は独立リーグへ進んだ。

な: 俺はその辺の話を全然知らんねん。プロ野球はいつ頃まで意識してたん?

若: 独立リーグまでは意識してたよ。大学進学の時は、監督から関東の大学に行けって言われてから、亜細亜大学と中央大学と國學院大学の3つを受けてん。

な: 亜細亜に行かんくてよかったな(笑)。めっちゃ厳しいもんな。

若: ほんまにそう(笑)。高校3年生の時も監督から亜細亜大学受けろって言われててんけど、「絶対に嫌や!」と思って。

な: 今までと一緒やんけ(笑)!

若: 合否の連絡が部長のところにきて、「俺の力不足でごめん」って言うてくれるんやけど、俺は落ちてほしかったからめっちゃ嬉しかってん。中央大学は、練習は楽って聞いてたし東都リーグの1部やから、是が非でも行きたいと思ってた。試験受けた時に「君は赤丸ついてるから多分受かるで」って言われて、調子乗っちゃったんですよ。

な: 「赤丸」? そんなんあるんや! また調子乗ってるやん。

若: それで俺は却ってからまわりして、落ちてもうた。國學院大学は洗濯されたユニフォームがドロドロなんよ。ユニフォームが汚いってことは練習が厳しいってことやから。

な: センサーがビンビンになってもうてるやん(笑)。

若: 滋賀学園で2年生からキャプテンやってたから、そこを評価してくれたっぽくて。大学はやめるつもりはなかったんやけど、独立リーグがあるってことを教えてもらって、野球だけして給料もらいながらプロ目指せるって最高やん。結局あかんかったんやけどな。

な: いろいろなところ回って今少年野球でコーチしてるわけやん、自分の教えるスタイルっていうのは指導に反映されてる?

若: 技術っていうのは後からついてくるもんやし、子供は練習すれば勝手に上手くなる。だからそういうことより、俺は人間として未熟やったから、挨拶ちゃんとするとか目についたゴミ拾うとか、人間的な成長を促すようなことしか言わん。

な: 2年キャプテンを経験したっていうのがでかいんや。

若: 出川も今少年野球のコーチをしてるんやろ?

な: コーチとして登録はしてないからノックは打てないけどね。息子がやってるから趣味で俺も付いていってるだけ。だから俺は技術とか挨拶とかも何も教えへん。ただ「楽しむ」ってことにだけフォーカスして、子供達が進んで楽しめるような畑を作る感じでやってるよ。子供は主体性がちゃんとあるのに、大人の意思が入ってきてそれがうまくできんくなる。ゲーム感覚でやりたいことをやらせてあげて、それができないと勝手に自分達で考えて、進んで練習するようになんねん。

若: 「勝つこと」が優先順位の1番にきちゃうと、おかしくなっちゃうんよな。もちろん野球してれば勝ちたいって思うことは当然なんやけど、バランスが悪くなってしまう。少年野球って入り口やから、キャッチボールをすること、バットを振ることの楽しさを知って、その先に勝つ喜びってあるもんやから、最初から勝つことに執着せんほうがいいよな。

な: 「ゲッツーしたい!」「ファインプレーしたい! 」って子供達が言うのを大人達が「それは基礎ができるようになってからや」って押しつぶしちゃう。最初はできないのは当たり前なんやから、やらしたったらいい。なんでできないんだろうって自分で考えれるようになれば、キャッチボールの大切さに勝手に気づいて練習するんよな。

若: 勝ちたいから、大人達の言葉がきつくなっちゃうんよな。「なんで振らんねん!」とか「ちゃんと投げろ!」とか。それで子供が萎縮しちゃって思うようなプレーができなくなったら本末転倒やん。

な: 遊びで野球やってる時に、俺はいつも子供らと唐揚げを賭けて勝負すんねんけど、みんな打ちにいくんねん。打ち気でいくけどボールやからバットを止める、それが一番やん。でも試合になると怒られるから、振りにいけない子が多い。プロ野球でもハーフスイングが多いのは、打ちにいってるからやん。単打の当たりでも二塁に走塁するつもりで止まるやん。遊びの中ではみんなわかってんのに、試合になるとできなくなっちゃうって、本当にもったいないなって思う。だから俺は大人の話なんか無視して、口ごたえしろって子供らに言うてる(笑)。

若: もちろん全国大会目指して頑張ってる少年野球チームが間違ってるわけじゃない。でもみんながみんなそうじゃないかもしれん。「勝つことが大事」ってことを今の段階で大人が押し付けるのは違うかなって思う。

な: 守備で一番大事なことを子供らに聞いた時、「捕ること!」って言う子が多いねんけど、「アウトにすること!」って言った子がいた。形がどうあれ捕り方がどうあれ、その認識が基本やん。逆シングルでもアウトにできたらええんやけど、それができないから打球の正面に入ってボールを捕るってことやねん。そこに気づけたら、子供らは「アウトにするためにどうするか」を考えて自分たちで作戦会議をする。その成長を見てるのがめっちゃ楽しい。大人がその可能性の芽を摘んでるのは見てられへん。みんな唐揚げのために野球したらええねん!

若: 勝ったら嬉しいのは当たり前やから。その過程もしっかり楽しめんといかんよな。

な: 最後しっかりまともなこと話したな(笑)。今日はありがとう!

若: こちらこそありがとう!

 

文責:編集部

※本対談は2025年7月、感染対策をして取材を行いました。
※本対談は45巻に掲載された対談の後編です。

 

 

 

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